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良食生活を活性食に  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」

2023.07.03

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良食生活を活性食に  安武郁子 食育実践ジャーナリスト  連載「口福の源」の写真

 50歳以上が半分以上を占める日本。かくいう私も50代です。「食育」は、この50代の働く男女に特に身近に感じてほしい取り組みです。

 しかし、この世代にとって食育は馴染みが薄く、子育てや子どもの学習に関連するものと思っている人が少なくありません。その背景には、義務教育課程の中学校で家庭科が男女共修となったのが1990年であるという事実があります。

 現在40歳以上の方、中学時代を思い出してみてください。技術・家庭科の授業では、男子は技術室、女子は家庭科室に分かれて授業を受けていませんでしたか?これは当時の性別による役割分担が当たり前だった時代の光景です。

 男女共修となった世代は、女子も本棚を作ったり、男子もエプロンを制作したり、男女で調理実習をしています。男女共修化によって、性別による分業や固定概念は大きく変化しました。男女が共に社会で活躍し、家庭や職場での役割も多様化しています。

 そこで重要なのは、食育が単に子育てや家庭に関連するものではなく、個々の健康や「口福」と結びついているということです。食育は性別や世代を問わず、健康を維持し心身のバランスを整えるために欠かせない生涯学習です。

 40代、50代は生活の忙しさやストレスが増える年代かもしれません。唾液が減少し、かむ力が弱まり、飲み込む力が衰えてくる世代でもあります。どのような食べ方をしていますか? 水分がないと飲み込めなかったり硬いものがかめなくなったり、むせることはありませんか? 食べ方を改めないまま年を重ねていくと、食べること自体が困難になる恐れがあります。

 食生活、活性、活力、活気、活躍、活発...。「活」の字は、健康と深い関わりのある「舌」がついています。そして「氵(さんずい)」は水が勢いよく流れ、循環する様子。「活」の字から、しっかりと舌が潤うように唾液を出すことは、お口の健康にもつながっていることがうかがえます。

 かんで食べることは日々必要なトレーニングです。一口量が多いとよくかむことができません。適量を口に入れ、咀嚼(そしゃく)して、唾液の力で飲み込む食べ方を心がけましょう。それには、食事の時間の確保が必要です。食事の時には、水やお茶といった流し込む要因となる水分を食卓に置かないなど、活性食をプランニングしていきましょう。

Kyodo Weekly・政経週報 2023619日号掲載)

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