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安全・安心・交流の拠点に  郵便局の窓口ネットワーク  沼尾波子 東洋大学教授

2023.05.29

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 金融機関などの窓口や店舗の閉鎖が加速している。人口減少に加えて感染症を契機とした窓口サービスのオンラインへの転換により、首都圏でも、都市銀行の支店や携帯電話ショップなどが次々と店舗を閉めている。

 そのような状況の中で、全国2万4000の窓口ネットワークを維持するのが郵便局である。人口減少が進む地方圏を中心に、農協や漁協はこの20年の間に窓口を6割程度に減らした。だがこれとは対照的に、郵便局はその数をほぼ維持している。郵便法の規定により、郵便局はユニバーサルサービスとしてネットワークを維持することが求められているためである。

 しかし、一日の来客数が数名しかいない窓口を含め、郵便局の維持と存続には多額の費用がかかる。日本郵便単独での採算性確保は難しく、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の拠出金や手数料に支えられて、郵便局の窓口が維持されている。

 日本の国土構造とその保全を考えるならば、森林や水源を有する地域に、環境保全や自然エネルギー利用、農林業や観光業の推進などを目的として、人々が居住し続けることは必要であろう。そのとき、中山間地域で郵便や金融などのサービスにアクセスできる環境が、2万4000カ所のリアルなネットワークを通じて維持されていることの意義は大きい。しかし、郵便局が全国の窓口を維持するには、採算性の確保に向けた工夫と新たな役割の創出が必要だろう。

 2017年に総務省「郵便のユニバーサルサービスに係る課題等に関する検討会」は、郵便局に期待される役割として、郵政3事業(郵便・貯金・保険)にとどまらず、防災、高齢者対策、過疎対策、地域コミュニティー機能など、地域の安全・安心・交流の拠点としての役割を担うことを提起している。

 リアルな窓口を通じて郵便のみならず金融商品に対する説明や相談、情報提供を行うことで、安心してサービスを利用することができる。さらに郵便局の窓口が、単なる資金のやり取りだけでなく、ヒト・モノ・サービス・情報が集まる物理的な地域の「拠点」として、種々の機能と役割を担うことができるのであれば、リアルなプラットフォームとして、価値を高めることにつながるだろう。

 すでに各地の郵便局で、地元特産品の開発と販売、空き家の見守り、健康相談会の開催、行政サービスの窓口機能などを担う取り組みも進められている。

 地域で存続してきたヒト・モノ・カネ・情報のネットワークを全国に結ぶ機能を有する郵便局。顔の見える関係に裏打ちされた地域の「拠点」機能とそれをつなぐネットワーク再構築に向けた挑戦を見守りたい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年5月15日号掲載)

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