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農福連携さらに幅広く  地域再生大賞の鹿児島「花の木農場」  沼尾波子 東洋大学教授

2023.03.06

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農福連携さらに幅広く  地域再生大賞の鹿児島「花の木農場」  沼尾波子 東洋大学教授の写真

 地方新聞46紙と共同通信が、地域活性化の取り組みを表彰する2022年度の第13回地域再生大賞が1月、決まった。大賞受賞団体は「花の木農場」である。この団体は本土最南端の鹿児島県南大隅町で障がいを抱える人々の就労と社会参加に向けて50年近く事業を展開し、今日、新たな地域づくりに取り組む。

 1970年代、障がい者をコロニーに隔離し、暮らしを保障するというスタイルに疑問を持った初代理事長が、ともに働き、ともに暮らす場をつくりたいと考え、農業を展開することを決意。地域の主要産業であるお茶の生産などにより、障がい者の自立に向けた就労機会をつくろうと、社会福祉法人白鳩会立ち上げの5年後に農事組合法人根占生産組合を創設した。

 5㌶の土地を切り開いてスタートした農場は次第に拡大し、現在は38.3㌶と東京ドーム約8個分の面積となり、お茶のほか、養豚やニンニク、米や野菜の栽培などを展開する。さらに6次産業化を図り、食肉加工やパン、お菓子などの生産や、レストランやショップでの販売も行っている。(写真:ショップに並ぶお菓子など=筆者撮影)

 初代理事長が掲げたのが「共汗共育」。ともに汗を流しながら、命を育むことで人と人とのつながりを大切にするというものだ。

 農場では、矯正施設などとの連携を通じて触法障がい者も受け入れている。〝犯罪〟が起こるのは、そのような関係性を生む社会の側にも要因がある。障がい者がよく分からないうちに、結果的に犯罪行為に至ってしまうこともある。花の木農場では、一人一人の魂と丁寧に向き合い、社会的なつながりを構築している点が印象に残った。

 農業生産と6次産業化を通じた地域の社会経済循環の活性化にも取り組む。農場の約4割は借地であり、地域の耕作放棄地の抑制にもつながっている。お茶は「大隅茶」としてブランド化し、有機JASや、国際水準の農業生産工程管理「ASIAGAP」の認証を受けており、食品の安全性、環境や人権に配慮した取り組みを進めている。

 農場内の二つの直売所兼レストランは地域の交流拠点にもなっている。地域イベントなども開催しており、多くの来場者が農場を訪れるという。

 人口減少が進む南大隅町ではさまざまな分野で人手不足も生じている。今後、農場では森林管理会社や地元ベンチャー企業とも連携し、障がい者をはじめとする新たな仕事と社会参加の機会の創出に向けた準備を進める。また、アフターコロナ時代を見据え、観光分野への事業展開も計画している。

 豊かな自然に恵まれた地域で、多様な人々が多様な形で社会と関わり、仕事と暮らしを営むことのできる地域づくりに向けて、柔軟な発想で農福連携の取り組みを広げる。そんな地域に魅力を感じた人々が来訪する。ダイバーシティー(多様性)による関係人口創出という新しい活性化の可能性を感じた。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年2月20日号掲載)

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