お墓、どうされますか? 藤波匠 日本総合研究所調査部上席主任研究員 連載「よんななエコノミー」
2023.04.24
出生数減少が止まりません。2015年には100万人以上あった出生数が、7年後の22年は77万人程度となりました。
少し長いスパンで見てみると、その減少のスピードがより深刻なものに感じられると思います。いま50歳前後の団塊ジュニア世代が生まれたころには、年間200万人以上あった出生数が、その子どもの世代にあたる90年代生まれでは120万人程度となりました。そして、間もなく団塊ジュニアの孫の世代が生まれる時期に差し掛かってきますが、70万人前後となる見込みです。ちょうど1世代ごとに4割減少するイメージです。
これほど速いペースで少子化が進むと、さまざまな社会の仕組みやインフラについて、見直しが必要になってきます。経済や社会保障の持続性への懸念はもちろんのこと、より身近なところでは各地で学校の統廃合が進みます。筆者が卒業した高校も最近、統合の対象となってしまいました。
ローカル鉄道も、その多くが廃線に向かって進んでいます。この春も、北海道の留萌線で一部区間が廃止され、残りの区間も3年後の廃線が決定しています。北海道以外のJR各社でも、コロナ禍による都市部の旅客需要が減ったことで経営が悪化し、周辺人口が減って需要が低迷しているローカル路線の整理に向けて動き出しました。
筆者は最近、より個人的な問題であるお墓のことが気になっています。親より子の数が減り続けると、1世代ごとに管理しなければならないお墓の数が増えていくことは間違いありません。一人っ子同士の結婚であれば、管理するお墓は通常2基となります。
代々一人っ子同士で結婚を繰り返すと仮定すれば、2の累乗で管理するお墓が増えていくことになります。近年は子どもを持たない人も増加傾向にあり、お墓の維持・管理に悩んでいる人が増えていることは想像に難くありません。
維持・管理が困難となったお墓を閉じ、遺骨を別のところに埋葬することを、一般に「墓じまい」といいます。将来を見据え、墓じまいによる遺骨の維持や管理を、お寺や霊園にお任せする永代供養にする場合もあるようです。
少し前に知ったことですが、私たちが当たり前のこととして行う遺骨を墓に埋葬する習慣は、必ずしも普遍的なことではないようです。限界集落となってしまった北陸地方のある山村で聞いた話ですが、その村には、伝統的に遺骨を墓に埋葬する習慣はなく、当然墓地もなかったというのです。
村人の遺骸は、山で荼毘に付した後、そのまま散骨していたそうです。古くからの宗教観や、狭隘な谷筋に位置している集落の土地制約などによるものと考えられます。筆者は自身の宗教観から受け入れがたいと思う一方で、当地では、貴重な土地を墓で占有しない合理的な慣習であると納得したことを覚えています。
墓を建てる、建てないは個人の判断です。ただ、筆者もそろそろ自分の墓のことを考えなければいけない年齢に差し掛かってきました。末代に負の遺産を残すことのないよう、よく考えていかなければいけないと、つくづく思う今日この頃です。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年4月10日号掲載)
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