伸びるノンアル飲料市場 健康志向追い風、増える選択肢
2022.10.24
コロナ禍で高まる健康志向を追い風に広がったノンアルコール飲料。登場から13年を経て、市場に定着したビールテイスト飲料に続き、サワー、チューハイ、カクテルテイストと、そのまま飲めるノンアルRTD(レディ・トゥ・ドリンク)は、ワインテイストなど選択肢が増えている。清涼飲料メーカーが同市場に参入する動きもあり、シェア争いは激しさを増している。業界では2030年までにノンアルRTD市場は倍増するとの予測もある。
日本の酒税法では「アルコール分1度以上の飲料」が酒類。しかし1%未満の微量でもアルコールを含んでいれば、体質や飲む量次第で酔う可能性がないとは言い切れない。消費者が抱いていたアルコール分に対する抵抗・不安感の払拭が課題となる中、キリンビールが09年に「0.00%」とアルコール度数を小数点第2位まで表示できる「キリンフリー」を世界で初めて開発。
あえてノンアル選ぶ
キリンに続き、各社も追随してアルコール分0.00%のビールテイスト飲料を発売したことで市場は活性化。さらに、コロナ禍で健康志向が強まった上、気分や状況、体調などに合わせ、「ビールの代わり」ではなく、あえてノンアルを選択する傾向も目立っている。
こうした市場の変化に伴い、0.00%のビールテイスト飲料市場で競争が激化している。ノンアルビールテイスト飲料でトップを走るアサヒビールは2月、「アサヒドライゼロ」をリニューアルしたほか、キリンも4月に「キリン グリーンズフリー」をリニューアル発売。年間販売目標を当初予定の約110万ケース(大びん換算)から約4割増となる約150万ケースへ上方修正した。また、7月~8月に製造数量を前年同期の約2.6倍まで増やした。
ワインテイスト登場
10年にノンアルビールテイスト飲料「オールフリー」を発売、11年にレモンサワーテイストチューハイ・カクテル「のんある気分」を発売したサントリー。今年3月には、新たにワインテイストの「ノンアルでワインの休日」を発売、ラインアップの拡充を図っている。
発売直後の4月には22年の販売計画を当初の20万ケース (350㍉㍑×24本換算)から80万ケースに上方修正した。「3~7月の累計販売実績は修正計画比65%の50万ケース超で、計画達成に向けて順調に推移」している。
同社は21年のノンアルワイン市場を前年比77%増の13万2000ケースと推定。「コロナ禍での酒類提供自粛の影響もあり、業務用でのスパークリング製品を中心に大きく伸長」した。それでも「ワイン総市場の0.6%程度で、市場はまだまだ小さい」状況。「ノンアルでワインの休日」を通じて市場を盛り上げていく。
レモンサワー味人気
ノンアルRTDの中で、とくに商品化が目立つのがレモンサワーテイスト。サッポロビールが3月に発売した「サッポロLEMON'S FREE(レモンズフリー)」はレモンサワーのような満足感のある味わいを実現、クエン酸の働きで疲労感を軽減する機能性表示食品。
同社は「レモンサワー好きの男女をターゲットとしたノンアルレモンサワー」とし、「しっかりとしたレモン感のある味わいとクエン酸による疲労軽減の機能性を訴求した商品であり、『翌日のためにお酒を控えたい、疲れを軽減したい』夜のリラックスタイムの需要獲得」を目指している。
「電子商取引(EC)販売も徐々に販売が上向いており、固定客層が着実に増加している」という。「ノンアルRTDの市場規模は30年までに約2倍まで拡大していく」と推定、「採用間口の拡大が課題であり今後、店頭展開の強化を図っていく」としている。
アサヒビールも今後、レモンサワーテイスト市場は拡大すると予測。5月にノンアルのサワーテイスト飲料「アサヒスタイルバランスプラス 濃レモンサワーテイスト」を期間限定で発売した。1缶あたりレモン25個分のビタミンCを配合した。同社はサワーテイスト飲料「スタイルバランスプラス」を15年に発売、以来、多彩なラインアップを展開してきた。
サントリーは21年3月にノンアルレモンサワー「のんある晩酌レモンサワー ノンアルコール」を発売し、7月に年間販売計画を当初の約2倍に上方修正。さらに、今年3月にリニューアルして発売した。
清涼飲料メーカーも攻勢を強める。日本コカ・コーラは18年にアルコール飲料に初めて参入したレモンサワーのブランド「檸檬堂」から、ノンアルレモンサワー「よわない檸檬堂」を2月に発売した。檸檬堂のノウハウを活用し、レモンサワーを好む人が、あえて飲まない日の選択肢の一つとするよう、ノンアルコールながらも本格的な味わいを追求した。
サントリーによると、ノンアル飲料市場でビールテイスト以外が占める比率は21年が17%、22年が20%。それだけに、ノンアルRTDはビールテイスト飲料に比べて「未開拓の領域」といえる。ノンアルRTD特有の機能性を訴えて市場の拡大を狙う。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年10月10日号掲載)
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