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国産材利用の定着・加速を  林業国民会議、新会長に宮下正裕氏

2022.10.12

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国産材利用の定着・加速を  林業国民会議、新会長に宮下正裕氏の写真

 産業界を中心に国産木材の需要拡大を通じ地域活性化を図る「林業復活・地域創生を推進する国民会議」は12日、8回目となる会合を東京都内で開き、国産木材の利用を拡大する方策や林業の振興策について意見交換した。会議には関連産業の企業・団体の関係者のほか、野村哲郎農相、自民党の江藤拓総合農林政策調査会長、織田央林野庁長官、浜田省司高知県知事らも出席した。

 会議では新しい木造建築に取り組む建築家らが集うNPO法人「team Timberize(ティンバライズ)」の安井昇理事長が「事例報告 都市に『木の建築』と『木の空間』をつくる」とのテーマで講演。「2000年の建築基準法改正で木造建築でも耐火建築が建設可能になった。近年、燃えにくい木、腐りにくい木のほか、硬い木、柔らかい木も開発され、木が再び建築の主役に躍り出ようとしている」と、木材の新しい可能性について指摘した。

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 安井氏は建築素材としての木の長所として、軽さ、熱が伝わりにくく冷めにくいーなどを挙げ、触覚・嗅覚・視覚の3点からも木材は優れており「見えないところにたくさん使うことも考えられる」と述べた。コンクリートや鉄と比べた短所には、腐ったり反ったりする水による弱さや、燃え広がったり遮音性が悪かったりする点を挙げた。

 耐火性に関しては「木材にはゆっくり燃えるという特徴があり、短時間が燃え広がらない点を長所ととらえてみたい」と述べた。安井氏によると、15年の建築基準法改正で「1時間準耐火構造」による木造3階建ての学校が登場し、特に都市部以外で3階建ての校舎が増えている。「木造建築物は火事にも地震にも負けない。木材は性能が劣るというのは偏見だ」と指摘した。

 自治体の庁舎や関連施設、病院などでも木造建築が増えており、今後は「林産地から遠い都市部でも、幅広い木材利用を期待したい」と述べた。「木に学べば新たな使い方も提案できる」として、木材について学び、木造の担い手を増やす必要性を指摘した。

 会議では織田林野庁長官が「森林・林業・木材産業の『グリーン成長』に向けて」とのテーマで基調講演した。織田氏は林業・木材産業の現状について「木材需要のうち国内生産量の割合を示す木材自給率は2008年に24%だったが、2020年に40%を超えるなど、政策効果から良くなっている数字もある。効率の高い伐採と植林を進めていきたい」と述べた。

 国産材の需要拡大については、輸入材使用が多い低層住宅での国産材活用や、低層の非住宅建築物・中高層建築物の木造化・木質化推進の必要性を指摘した。木材利用は「建築時の二酸化炭素排出削減や炭素の貯蔵など環境面での貢献が大きい」とし、そうした環境面でのメリットの数値化などによる「『見える化』に力を入れたい」と述べた。

 環境政策関連ではさらに、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度「Jークレジット」を挙げ、「森林由来クレジットの創出や活用促進に向け、制度の改善をさらに進める」と説明した。

 また会議では、同会議の企画立案を担う「林業復活・地域創生推進委員会」のワーキンググループ(WG)主査を務める日本経済研究所の鍋山徹専務理事が、WGの活動について報告。これまでの実績をまとめた上で、最近の活動として、未利用材などを活用するバイオマス発電を推進する先進事例として挙げた。
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 今後の展望に関して鍋山氏は①国民への意識浸透で国産材利用を定着・加速させる②ウッドショックによる木材価格上昇の山元に十分還元し、育材コストに充てる③森林教育や交流体験により継続的に担い手を育成するーことなどを指摘した。

 会議でのあいさつで野村農相は「10月は『木材利用促進月間』。国産木材の活用が地域経済の活性化につながることを期待する」とし、江藤自民党総合農林政策調査会長は「山を守ることは国を守ること。すべての源は山にある。現場の声を聴いて林業を支援していく」と述べた。浜田高知県知事は「日本一の森林県・高知からも見ても、木材利用には追い風が吹いている。本会議に期待している」と話した。

 「林業復活・地域創生を推進する国民会議」は建設や商社、不動産など企業の幹部や自治体首長ら220人が発起人となり2013年に発足。日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)を中心に運営し、各地の経済連合会などと連携している。この日の会議では最後に、JAPICの丸川裕之専務理事が、発足以来同国民会議のトップを務めてきた三村明夫会長(日本商工会議所会頭)が退任し、宮下正裕副会長(竹中工務店特別顧問)が会長に就任したと発表した。

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