消費者の関わりが重要 食料安保強化で指摘 農中総研、ウクライナ危機受け緊急フォーラム
2022.07.20
農林中金総合研究所は7月20日、緊急フォーラム「世界と日本の食料安全保障を考える~ウクライナ危機長期化を受けて~」を開き、オンラインで約500人が参加した。
同研究所理事の阮蔚(ルアンウエイ)研究員(中央右)は「緊迫化する世界の食料需給」と題して主要穀物の国際需給について講演し、「小麦相場の高騰と比べると、米の需給は比較的安定しており価格も落ち着いている」と指摘、中長期的な課題として「化学肥料への依存を減らすこと」とした上で、「技術面で日本は世界に貢献できる」と述べた。
引き続き、同研究所の小針美和主任研究員(中央左)が、稲作を中心とした耕種作物への影響について講演し「米価の下落で悪化している経営に対して、肥料価格の高騰が追い打ちになる」と懸念を示した。また、長谷川晃生主席研究員(左)が、畜産への影響について講演し「飼料価格の高騰で北海道の大規模酪農経営への影響が大きい」と指摘した。
質疑応答の中で、国内の米余りについて、小針主任研究員が「消費者の発想の転換も必要」と述べ、米の消費を増やす上で消費者の関わりが重要だと指摘した。
長谷川主席研究員も「(飼料の国産化で)品質への影響が出るので消費者の理解が必要」と述べ、食料安保は生産だけでなく、流通や消費の関わりが重要だという見解を示した。
阮理事研究員は「いずれ価格が下がった時に(食料危機を)忘れてしまうことが最大の問題だ」と述べ、息の長い議論が必要だと指摘した。
同研究所の皆川芳嗣理事長が「備蓄の強化を正面から議論する時期に至った。肥料や飼料の価格高騰によるコスト高とデフレ圧力に挟まれ、コスト転嫁が難しい農業は立ち行かなくなる」と懸念を表明、「今こそ現在の政策を洗いざらし並べて検討するべきだ」と述べ、農業政策の総点検が必要と総括した。
ロシアによるウクライナ侵攻を受けた同総研の緊急フォーラムは4月13日に続いて2回目。
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