緊急フォーラム「世界と日本の食料安全保障」 農中総研が開催
2022.04.13
農林中金総合研究所は4月13日、緊急フォーラム「世界と日本の食料安全保障~ウクライナ情勢を受けて~」を開き、オンラインで約330人が参加した。食料需給だけでなく、環境政策、貿易・投資、金融など国際的な経済秩序への影響も含め、幅広く活発に議論した。
前半では、同研究所理事の阮蔚(ルアンウエイ)研究員(写真右)が「ウクライナ危機で改めて注目される食料安保~米中貿易摩擦への波及~」と題して講演。2009年にウクライナで現地調査をした経験も踏まえて、主に最新の国際情勢について報告した。
続いて同研究所執行役員の平澤明彦基礎研究部長(写真左)が「国際情勢と日本の食料安全保障 ~その特質と課題~」と題して講演し、食料安保について日本、欧州、スイスの事例を報告、日本の政策面の課題を指摘した。
質疑応答では、ウクライナ研究会の会長でもある岡部芳彦神戸学院大教授が「穀物供給の面でロシアは信頼できるか、ウクライナは安心できるか」と質問。阮理事が「ロシアはこれまで繰り返し穀物の輸出を停止しており供給国としては信頼できない。ウクライナは政治的な不安定さが課題だ」と応じ、比較的早期に停戦が実現する場良でも、穀物の供給が安定するとは限らないという見解を示した。
別の参加者からは「世界貿易機関(WTO)や環太平洋連携協定(TPP)のような自由貿易の枠組みに限界があるのでは」という質問があり、平澤研究部長が「国内の農業生産を維持するため、多様な農業のあり方を認めるような協定が必要になる」という見解を示した。
同研究所の皆川芳嗣理事長が「短期、中・長期両面で大きな変化が起きている。日本の食料生産の潜在力が低下していることを重く受け止めなければならない。食料安保を日常的に再度考えるべき重要な時機を迎えている」と総括した。
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