つくる責任、つかう責任 知ってほしい海の今 佐々木ひろこ フードジャーナリスト(Chefs for the Blue代表)
2022.06.27
私たちChefs for the Blueの活動が、2017年5月に行った料理人向け水産勉強会が起点だったことはこの連載でも以前に書いた。つまり、今年の5月で活動開始からまる5周年を迎えたことになる。
この間に起こった社会の変化は本当にめまぐるしく、啓発活動を続ける私たちの体感としても5年前とは隔世の感がある。そんな社会を写す鏡として、たとえばメディアの動きを挙げてみようと思う。
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活動開始まもない2017年11月、週末の大人気スポットである青山ファーマーズマーケットでフードトラックイベントを行った。トラック3台に有名シェフが2人ずつ乗り込み、サステナブル(持続可能)な魚介料理を販売したのだ。(写真)
初イベントということでどきどきしながら当日を迎えたところ、シェフたちのファンが開店前からずらりと列をなし、用意した600食は2時間を待たず完売した。大成功をおさめ、SNS上では大いに盛り上がったのだが、メディア掲載は英字新聞の1社のみだった。
ところがその3年後の2020年9月、メンバーの1人、石井真介シェフがサステナブルシーフードに特化したフレンチレストラン「シンシアブルー」を開店した際には、パンデミック下にもかかわらず取材依頼が殺到。驚いたことに、テレビのキー局や全国紙をはじめ2カ月で60社近い取材が立て込んだ。
中でも特徴的だったのは、メディアのジャンルや切り口がさまざまだったことだ。環境メディアやフードメディアだけではなく、経済誌や一般女性・男性誌、シティーガイド。新聞の紙面であれば、社会面、暮らし・生活面、経済面、地域経済面。
つまり年代も性別も興味対象もさまざまな方々が、海の問題、サステナブルな食や消費そのものに目を向け始めたのだと実感し、広報業務の苦労も吹き飛んだことを覚えている。
ちょうどその頃あたりから、チームの他メンバーもコンスタントにさまざまな取材をいただくようになった。啓発を活動の主軸に置く私たちとしては、多くの方々に「海の今」を周知し、「つくる責任、つかう責任」を理解していただく機会となるメディア掲載はありがたい。
今後より多くの方々とつながることができるリアルイベントも、パンデミックの状況をにらみながら近々再開したいと考えている。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年6月13日号掲載)
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