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実用化近づく培養肉  コストダウン進む  前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタント

2022.03.07

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 代替肉が一層の盛り上がりを見せている。植物肉を使った商品の販売に関するニュースを目にすることが増えており、後発である培養肉についても実用化が近づいている。(写真はイメージ)

 牛や豚などの家畜から採取した細胞を人工的に培養して作られる培養肉が、「本物の肉」として注目されている。

 世界で初めて培養肉が発表されたのは2013年のことで、オランダのマーストリヒト大のマーク・ポスト教授が、ロンドンで記者会見を行い、培養肉を使ったハンバーガーの試食会を開催した。当時は、25万ユーロ(日本円で3200万円程度)もの資金が使われていた。

 ここ数年で数多くのスタートアップが参入するなど、研究開発が加速している。2020年にはシンガポール政府が米国のEat Justが製造する培養鶏肉の販売を許可するなど、一部では実用化のフェーズに至るものも出てきた。

 培養肉の製造プロセスは細胞採取、細胞培養、成形の3段階に分けられる。特に大きな課題とされているのが、細胞培養において培地に添加する成長因子のコストダウンである。

 培養肉開発の初期には、医薬品の製造や細胞培養関連の研究などでよく使われるウシ胎児血清(FBS)が使用されていたが、FBSは非常に高価であり、また生まれる前の子牛の血清を使う必要があるため、倫理面や安全性の面でも改良が必要とされていた。

 最近では、FBSや動物性成分を除いた培地での成功事例が続々と報告されている。上述のマーク・ポスト教授が培養肉の量産化を目指して2016年に立ち上げたモサミートでは、19年にFBSを除いた培地を使い、コストを88分の1まで削減したと発表している。

 また、国内のスタートアップであるインテグリカルチャー(東京)では、外部から成長因子を添加せずに、さまざまな細胞を大規模に培養できる汎用大規模細胞培養システム「CulNet Systemþ」で特許を取得している。体内では、ある臓器が出す有用因子が血管を通って他の臓器に作用することで細胞の成長などを促しており、同システムでは、このシステムを人工的に再現することで大幅なコストダウンを図っている。

 世界の人口は2030年に85億人に達すると予測されている。人口増加に備えて、従来のタンパク質供給手法である畜産や養殖に加え、環境やアニマルウェルフェアに配慮した培養肉を工場で生産する時代が近づいている。

 今後、培養肉の実用化を迎えるにあたっては、生産工程の検査や安全性保証、商品表示に関するルール整備などの各種法整備が求められる。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年2月21日号掲載)

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