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「ゼロ・ウェイスト」社会をつくる  徳島・上勝町の試み  沼尾波子 東洋大学教授

2022.01.31

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「ゼロ・ウェイスト」社会をつくる  徳島・上勝町の試み  沼尾波子 東洋大学教授の写真

 葉っぱビジネスで知られる徳島県上勝町。この町は最近、もう一つの取り組みで注目を集める。それがゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動だ。

 ゼロ・ウェイストとは、浪費や無駄、廃棄物をなくし、ごみを出さない生産と消費のシステムを構築していくというもの。上勝町ではこれをまちづくりの理念の一つと位置付け、2003年に町議会全会一致でゼロ・ウェイスト宣言が採択された。

 当初は、生ごみ堆肥化のための生ごみ処理機購入補助、そして町内1カ所のゴミステーションにごみを持ち込む仕組みを構築した。高齢などで持ち込みができない場合、町が2カ月に1度収集に行き、安否確認も行う。現在45分別による収集が行われ、ごみの資源化率は80%を超える。町ではごみの焼却埋立費用の大幅な削減に成功した。

 興味深いのは、単なる規制やインセンティブの仕組みを入れるのではなく、住民や来訪者が楽しみながらゼロ・ウェイストに参加できる仕組みをいくつも創出してきたことである。

 まだ使えるものを町民が持ちこみ、誰もが持ち帰ることのできるくるくるショップ。高齢者が昔ながらの知恵や技術を生かして不要になった布や綿などからリメイク商品を作り販売するくるくる工房。祭りやイベントなどで飲食物提供の際にリユース食器の無料貸出を行うくるくる食器。さらに紙類の資源回収を広めるために始まった「ちりつもポイント制度」では、ポイントを貯めると環境に配慮した商品などと交換できる。

 2020年には宣言が更新され、ゼロ・ウェイストセンター「WHY」が完成した。?の形をしたユニークな建物で、地元の杉材や、地元で使わなくなった建具などを利用している。(写真:ゼロ・ウェイストセンター「WHY」のHPより)

 「?」の円形部分がゴミステーションエリア、さらにくるくるショップや交流ホール、シェアオフィスなどの施設が並ぶ。ゼロ・ウェイストの暮らしを体験できる宿泊施設もあるなど、来たくなるゴミステーションだ。

 町は、独自の基準によるゼロ・ウェイスト認証制度を通じて、町内飲食店のブランド化も進める。マイバッグ持参での買い物呼びかけや、マイ容器持参による量り売りの仕組みを取り入れる店も出てきた。ゼロ・ウェイストブランドとして、自然にあるものを使って楽しみ、ごみゼロを楽しむゼロキャンプや、町内の杉から木の糸を作りタオルなどを開発する取り組みもある。

 町は花王と連携し、洗剤の詰め替えパウチなどを回収し、おもちゃのブロックにして町に返すというリサイクル事業も展開、子どもに資源循環を体験してもらう事業となっている。

 上勝町では、ゼロ・ウェイストで暮らしを豊かにするさまざまな実験や挑戦を行うことや、その仕組みづくりを担う人材育成にも取り組む。ゼロ・ウェイストという名の創造性に目を見張った。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年1月17日号掲載)

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