生産・経営の効率押し上げ データ分析サービス 前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタント
2021.12.06
データ分析型のサービスとは、気象・土壌などの環境や作物の生育状況、作業日誌、財務などの各種農業関連データを分析し、農業者に営農技術や経営の課題に関する解決策を提案するものである。代表例がドローンによる作物の生育状況のセンシングである。
ドローンに搭載したマルチスペクトルカメラを用いて特定波長の反射率を測定し、植物の生育の活性度を表すNDVI(正規化植生指数:Normalized Difference Vegetation Index)と呼ばれる指標を計算する。これを、ヒートマップで表現して作物の生育状況を可視化するサービスが多く提供されている。
可視化の次のステージとして予測がある。作物の生育状況、気象や土壌のセンシングデータ、画像データなどを活用した人工知能(AI)による生育予測、収穫量予測、病害虫の発生予測などのサービスも技術開発が進んでいる。
生産だけではなく、経営面でのサポートも進む。生産や市況などのデータ分析を基に、最適な出荷時期を提案し、単価の向上や販売の機会損失の防止などにより、農業経営をサポートするサービスが提供されている。
農業でのデータの活用にはまだまだ伸びしろがある。農林水産省によれば、データを活用した農業を行っているのは農業者の2割程度にとどまっている。
この中に含まれるのは①気象・市況・栽培技術などの経営外部データの利用②財務・生産履歴など経営内部データのスマートフォン・PCなどでの記録③センサー・ドローンなどによる生育状況の分析といった活用方法である。
管理コストの削減にメリットがある大規模経営体や、環境のコントロールがしやすい施設園芸ではデータの活用が進む一方で、小規模経営体や露地栽培では活用率が低い傾向がある。
データ活用の拡大の糸口は、生産だけではなく、販売にもデータを活用することにある。実は、データ活用に取り組んでいない農業者であっても、手書きで生産日誌をつけている人がほとんどである。
生産日誌には、日々の作業内容が記録されており、現場の工夫や試行錯誤の履歴が散りばめられている。こうした情報をスマホやPCで入力するだけでも大きな価値がある。病害虫発生状況のメモや、それに対する農薬の散布履歴などは、紙の上ではなかなか活用しづらいが、データ化されていれば、それを消費者に分かりやすいように加工することが可能である。
今後は、農業者の工夫を分析し、消費者に伝えるサービスにも期待が高まる。
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年11月22日号掲載)
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