治水・利水へ水力発電増強を JAPIC提言、既設ダム運用高度化から
2021.06.30
日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は24日、水害対策(治水)と田畑などへの水供給(利水)を両立し、温室効果ガスの削減にもつながる水力発電の増強を求める提言を発表した。(写真はイメージ)
この提言はJAPICの水循環委員会(委員長:関克己河川財団理事長)が、「激化する気候変動に備えた治水対策の強化と水力発電の増強~治水・利水の統合運用と再編に向けたパラダイムシフト~」とのレポートとしてまとめた。
提言はまず、治水・利水の両面を強化するため、既設ダムを有効活用、再開発すべきだと指摘。先進的な降雨予測技術を導入するなどデータを活用し、平時・洪水時に機能を発揮できるよう運用を高度化すれば、平時は15~20%の発電量増が可能になるとした。
洪水時は利水ダムの事前放流増により、洪水調整容量が現在の2倍程度に増やせる可能性があるとの試算結果も示した。
高度運用を図ることにより、治水・発電の統合運用が可能になるダムは、全国に約1000基あるという。
水力発電の強みとして、①二酸化炭素(CO²)排出が少ない②発電経費が小さい③電力需要の変化に即応できるーの3点を挙げ、中山間地域への設置の可能性などから、経済波及効果が高く、地域活性化にも貢献すると指摘した。
今後は治水・利水統合運用に向けた体制整備を進める一方で、1980年の調査(第5次)が最新となっている資源エネルギー庁の「包蔵水力調査」の第6次調査を行い、水力発電の再評価と促進につながる政策を進めるべきだとした。
政府は脱炭素化に向け水力発電能力を増強する方針で、ダムの発電実態調査を進めており、容量拡大の工程表を策定する方向となっている。
国土交通省はダムを効率的に運用すれば売電収入などを得られる利点もあるとみて、自治体が管理するダムについても対応を促していく。
農業ダムは土地改良区が管理しているケースも多く、農林水産省は補助金を活用して水力発電の導入を促す方針だ。
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