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豊かな海を取り戻すために  間に合うか水産資源の保存・管理  佐々木ひろこ フードジャーナリスト

2021.05.17

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 日本は水産王国で、今も昔も豊かな海の恵みを享受している―そう信じている人は多いのではないだろうか。(写真はイメージ)

 和食は海の恵みをベースとして発展してきた歴史ある料理体系で、今では食のキラーコンテンツとして世界から注目を集めている。このコロナ禍においても回転寿司チェーンは毎日、盛況だし、スーパーに足を運べば冷蔵ケースには毎日欠かさず、さまざまな魚がたくさん並んでいる。

 しかし改めて統計を眺めてみると、実は随分前から異変が起きていることに気づくはずだ。

 農林水産省「漁業・養殖生産統計」によると、日本の水産物生産量のピークはなんと35年以上も前の1984年で1282万㌧。その後は雪崩を打ったように減少を続け、2019年には416万㌧と、ピークの3分の1以下に落ち込んだ。

 同省の「食料需給表」によると、食用水産物の自給率も113%を記録した1964年からどんどん下がり、1990年代に50%台に突入して以降、現在に至るまで上向いていない。

 日本の海の魚が減り、私たちが食べている量の半分近くを輸入水産物で賄う状況が、20年以上も続いているということだ。

 まさか、と思う方がいるなら、一度スーパーに並ぶ魚のパッケージをよく見てみてほしい。鮮魚も加工品も含め、サバはノルウェー産、カレイはアメリカ(アラスカ)産、ホッケはロシア産の表示があるものが多いだろう。シシャモはアイスランド産で、サケはチリ産やノルウェー産、タコはモロッコやモーリタニア産がほとんどだ。

 水産庁が発表している最新資源評価(2018年度)によると、日本周辺水域の資源評価対象魚50種84系群のうち、約半数の49%が資源水準「低位」にある。カツオもアサリも、スルメイカもアワビも、そしてアナゴもホッケも...、絶滅危惧種に指定された太平洋クロマグロやニホンウナギ、ここしばらくは毎秋メディアをにぎわせるサンマだけではなく、多くの魚種が激減しているのだ。

 その要因には海洋環境の変化なども含めいろいろあれど、過剰漁獲、つまり獲りすぎてしまった魚種も数多いとして2018年末、水産庁は大型水産改革を開始した。豊かな海をもう一度取り戻すため、漁業法を70年ぶりに大きく改正し、新しい資源管理方針を打ち出したのだ。

 「将来にわたって持続的な水産資源の利用を確保するため、新漁業法においては、水産資源の保存及び管理を適切に行うことを国及び都道府県の責務とするとともに、資源を...維持または回復させることを目標と(する)」。(「水産白書 令和元年版」)

 資源管理でずっと先を行く欧米諸国に比べ、スタートが遅すぎた感はあるものの、海の回復力がカバーできるタイミングにぎりぎり間に合ったと信じたい。


(Kyodo Weekly・政経週報 2021年5月3日号掲載)

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