枝元農水次官は辞任せよ 根深い「アキタ事件」 一ノ口滴水 ジャーナリスト
2021.01.22
(写真はイメージ)
吉川貴盛元農相が在任中に鶏卵業者から現金を受け取り、収賄罪で在宅起訴された「アキタ事件」は、現職の事務方トップである枝元真徹農水次官が接待に同席していたことを認め、単純な「政治とカネの問題」ではなく、官僚を巻き込んだ構造的な問題であることが明らかになった。
鶏卵生産大手「アキタフーズ」による過剰接待の一端は昨年7月に報道され、吉川元農相や西川公也元内閣官房参与(昨年12月に辞任、元農相)とともに、本川一善JRA(日本中央競馬会)副理事長(元農水次官)の名前も挙がっていた。本来ならば、この時点で省内調査を実施して自浄能力を示すべきだった。
調査が始まったのは、今月1月7日に雑誌「AERA」がアキタフーズグループの秋田善祺代表(昨年8月辞任)の交遊を記録した手帳の一部を報道してからだ。枝元次官は、2018年10月4日と19年9月18日に、当時の部下数人とともに秋田元代表、吉川農相らとの会食に同席したことを認め、今年1月19日に野上浩太郎農相が記者会見で発表した。19年の会食には西川元参与も加わった。
枝元次官は費用をまったく支払わず、同日午後、記者団のいわゆる囲み取材に対して「吉川農相(当時)が支払ったと思っていた」と釈明。「払ったかどうかの確認はしなかった」と付け加えた。要するに誰がスポンサーかも確認しないで接待を受けたのだ。
国家公務員が利害関係者(この場合はアキタフーズ)の負担で会食することは、国家公務員倫理法で禁じられており、「同法への違反が明らかになれば処分を検討」(野上農相)としているが、吉川元農相が支払ったならば違法性はない。
一方、農水省は、アニマルウエルフェア(動物福祉)に基づいて養鶏の規制強化を求める国際ルールの策定に反対するよう元農相が関与したとされる疑いについて「検証を進める」(野上農相)としつつも、「当初の政策判断については妥当」(同)と政策への影響はなかったとする見解を示し、元農相を擁護してきた。「持ちつ持たれつ」とはこのことだ。
そもそも日本の採卵用の養鶏方法は国際潮流に逆行している。「鶏卵は物価の優等生」「9割以上が国産」と、見かけ上は安定供給を果たしているが、飼料のほとんどを輸入に頼り、1羽当たりA4サイズの面積のケージに押し込んで身動きできない状態で飼育する養鶏業は持続可能ではない。
欧米ではケージ飼育で生産される鶏卵を購入しない動きが加速しているのに、日本ではケージを3、4段に積み重ねて経営効率を高める高層化に「進化」、普及した。
本来、国際潮流を事業者に周知して過密飼育を見直すように促すことこそ、農水省の責務ではないか。「持続可能性」を理解しない農水省の鈍感さは国際的な嘲笑の対象だ。
過密飼育により、鳥インフルエンザの流行による惨事は大規模化している。昨年11月に香川県三豊市で発生して以降、封じ込めに失敗、大産地の千葉県を含む15県に拡大し、殺処分は年末から年始にかけて正月返上で続いた。これまでに全国で約600万羽が殺処分され、なお続発中だ。
さらに新型コロナウイルスへの対応や、コメの需給調整など農水行政は課題が山積している。「保身」「隠蔽」「癒着」「鈍感」の4段重ねでは、この難局は乗り切れまい。枝元次官は会食について「詳しくは覚えていない」とも述べた。もう少し記憶力の良い人物が陣頭指揮に当たるべきだ。
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