拡大する食品宅配市場 川崎順子 矢野経済研究所フードサイエンスユニット上級研究員
2020.03.16

少子高齢化と女性の社会進出、ライフスタイルの多様化を背景に、食品や食事の宅配需要が増加している。(写真はイメージ)
2018年度の食品宅配市場は前年度比2.8%増の2兆1399億円と推計した。16年度に2兆円の大台を超え、国内の食関連市場が縮小傾向にある中、堅調な伸びを示す成長市場である。
食品宅配事業には、高齢者がメインユーザーの在宅配食サービスのほか、レシピと食材をセットにしたミールキットが人気の食材宅配、宅配ピザ、宅配すし、「出前館」や「Uber Eats(ウーバーイーツ)」といった食品(食事)宅配代行サービスが活況の外食チェーン・ファストフード宅配、牛乳宅配、生活協同組合の個人宅配、ネットスーパーなどが含まれる。
外食チェーン・ファストフード宅配では、外食業者が昨年10月の消費税増税後、軽減税率(8%)が適用されるテイクアウトやデリバリー事業を強化する方向にある。しかし、多くの飲食店が自前の配送システムを持たず、人員も不足している中、「出前館」や「Uber Eats」などが提供する食品(食事)宅配代行サービスは、デリバリー事業を強化したい飲食店と、人員や車両を有効活用したい配達拠点(員)をつなぐサービスとして注目されている。
食品宅配はこれまでのB to C(企業と個人の取引)から、社員食堂というB to E(企業の従業員向けサービス)に広がりつつある。企業の福利厚生サービスの一環として提供される社員食堂は、社内にキッチンを設けてその場で調理し、レストラン形式で提供される形が一般的だが、最近はキッチンがなくても手軽に導入できるデリバリー形式が増えている。
しかもその食事は従来の"安くて早い"から"健康的"なものへと様変わりし、従業員同士のコミュニケーションを促す効果から、IT系企業を中心に導入が進んでいる。社員食堂サービス業者によると、社食は従業員の健康増進に寄与するだけではなく、円滑な人間関係や事業創造の機会を提供する場となることが期待されている。社食が魅力的な会社には有能な人材が集まり、ロイヤリティー(組織への信頼・好感情)も向上することから、人材の流動性が高い業界では欠かせなくなっている。
食品宅配が家庭の日常食となり、企業の課題解決にもつながる時代だ。食品宅配市場の参入企業は、物流・配送といった宅配事業の課題に直面しながら、異業種・異業態が入り交じった厳しい市場環境で、利便性を追求しながら、付加価値の高い商品・サービスの提供に努めている。
(KyodoWeekly・政経週報 2020年3月16日号掲載)
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