農地所有適格法人の課題 清水豊 矢野経済研究所フードサイエンスユニット理事研究員
2020.02.17
農業には一個人としても参入可能であるし、また農事組合法人や株式会社として参入することも可能であり、その参入形態にはさまざまなタイプが考えられるが、近年増加する営農形態の一つとして農業法人が挙げられる。
農業法人とは「法人形態」によって農業を営む法人の総称である。農業法人には「農業組合法人」と「会社法人」の二つのタイプがある。
「会社法人」には有限会社、合名会社、合資会社、株式会社(株式譲渡制限のあるものに限る)の4形態がある。「農業組合法人」の中で農業経営を営む、いわゆる2号法人と、4形態の「会社法人」は合わせて「農地所有適格法人」と呼ばれる。2016年4月からは、農地を所有できる法人の呼称について、「農業生産法人」から「農地所有適格法人」に変更されている。
18年1月1日現在の農地所有適格法人数は1万8236となっている。05年の約2・3倍、法人数にして1万332の増加となっている。主要生産作物別をみると、18年の法人数は05年比で、米麦作を中心とした農地所有適格法人が約4倍の7841、そ菜(野菜)類を主に生産する法人も約3.5倍の3452と大きな増加となっている。
ここ10年で農業就業人口が約130万人減少する一方で、農地所有適格法人(農業生産法人)は約2・3倍となっており、超高齢化を迎える日本の農業経営は、個人から法人スタイルへと移行し続けている。
日本全体でも団塊の世代が18~20年に70歳以上となり、本格的な高齢化が進むが、農村では都市部に先駆けて高齢化や人口減少が進行し、農業就業者とともに集落を構成する人口も減少し続けている。
農業生産者は一生涯現役という方も多いとはいえ、やはり高齢化とともに販売農家から自給的農家へと移行せざる得ない比率は高まる。
農業に従事する高齢者のリタイアなどによる農地の荒廃や、担い手の不足などによる生産基盤の脆弱化はまさにこれからの10年間でより深刻化する。こうした農業に従事する高齢者のリタイア問題は、戦後の食糧生産を支えてきた農業経営が次の世代に継承されず、貴重な栽培ノウハウや技術の伝承が途絶えてしまうことを意味する。
どれほど情報技術が発達しても、長年にわたり各地域・各作物で蓄積されたノウハウや技術の承継なしに、より高度な農業生産の発展は見込めない。
増加する農地所有適格法人には集落営農組織からの法人成り(法人化)も多く、実質的に個人営農が多いという実態もあるが、農業の担い手の高齢化、事業承継、6次産業化も含めた経営管理の高度化を考慮すると、経営能力の高い農地所有適格法人の育成と、法人への農業集約は不可欠な状況となっている。
(KyodoWeekly・政経週報 2020年2月17日号掲載)
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