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大詰め迎える食料・農業・農村基本計画  石井勇人 共同通信アグリラボ所長

2020.02.10

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 新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定が大詰めを迎えている。農林水産相の諮問機関が2月に骨子案をまとめ、3月下旬に閣議決定する予定だ。(写真はイメージ)

 今のところ議論は盛り上がりに欠けているが、基本計画はほぼ5年ごとに見直す農業政策の中期的な指針であり、計画を着実に実行するためには、幅広い国民が議論に参加して相互の理解を深める必要がある。

 議論が低調な最大の理由は、官邸主導で政策を決める安倍晋三政権の手法だ。農業を成長産業として位置付け、環太平洋連携協定(TPP)など貿易の自由化と、規制緩和や経営規模の拡大を推進した。2015年3月に閣議決定した基本計画を逸脱する政策も多く、計画案を答申した食料・農業・農村審議会の権威と信頼は失墜した。

 もう一つの理由は時間不足だ。これまでは答申の1年前から20回程度の会合を開いて審議した。幅広い関係者が下から議論を積み上げたのだ。

 しかし、今回は審議の開始が昨年9月で答申まで半年しかなく、会合も10回にとどまっている。昨年は4月に統一地方選挙、7月に参院議員選挙があったため、農業政策を選挙の争点から外すという安倍政権の思惑が働いたのだろうか。

 いずれにせよ、今更嘆いてもむなしい。問題は国民各層の関心の低さだ。例えば、農水省はインターネットや郵送で意見や要望を公募しているが、昨年12月に公表した集計(11月2日~12月13日分)だと339件しか集まっていない。

無関心が最大の課題

 しかも、偏りが極端だ。消費者の意見は7件だけ。大半は「農業関係者」「農業団体」で、都道府県別にみると、兵庫(134件)と山形(63件)が突出し、ゼロ件が18県もある。こうした無関心こそが、食料・農業・農村にとっての最大の課題ではないのか。

 これまでの議論は、農地や担い手の確保など農業生産の分野に重点が置かれ、環境保全や伝統文化の継承を含む多面的機能や、食の安全を含む食料安全保障といった国民が関心を持つ議題に踏み込んでいない。

 例えば、食料自給率は、目標の45%(カロリーベース)を大きく下回る過去最低水準の37%に落ち込んでいる。食料安保に懸念はないのか。自給率の目標設定はどうあるべきか。「もうかる農業」だけで地域を守れるのか。最重要の争点は先送りされている。

 農林水産省は2月末に意見募集を締め切る。ぎりぎりだがまだ間に合う。消費者はもちろん、料理人、飲食店経営者、医療や教育の関係者、気象・天候やデジタル技術の専門家、若者、外国人らの幅の広い声を届けよう。そのことが次期計画の信頼を高める前提になる。

(KyodoWeekly・政経週報 2020年2月10日号掲載)

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