即席コーヒー市場が成長 文化根付く流れが追い風に 中国 NNA
2023.12.08
中国各地でコーヒー文化が根付きつつある中、手軽に利用できるインスタントコーヒー市場も伸びる流れにある。コーヒーチェーン各社が地方への出店を加速していることや生活リズムが速くなっていることなどがインスタント製品の利用を促す大きな追い風。中国のインスタントコーヒー市場は2026年に22年から2倍以上の1100億元(約2兆3000億円)に迫るとみられている。(写真はイメージ)
市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)が報告をまとめた。
中国のインスタントコーヒー市場は好調に推移している。20年の市場規模は221億元だったのに対し、22年は418億元に伸長。新型コロナウイルス禍の20年からの3年間も伸び続けた。今年は前年比27.5%増の533億元となる見通しだ。24年は680億元、26年は1099億元になるとみている。26年は20年から5倍に増える計算。コーヒー文化が中国各地で根付きつつあるのが市場成長の背景。大手コーヒーチェーンによる地方での市場開拓の進行が大きく貢献しており、沿海部大都市の1級都市や地方大都市の2級都市での開拓を終えた各社は、コーヒーの消費習慣が浸透していない地方の3級以下の都市に注目して出店を進めている。地方でコーヒーに触れる機会が増える中、自宅や職場などで手軽に利用できるインスタントコーヒーの引き合いが全国的に高まる流れにある。
コーヒーの消費頻度がまだ低い水準にとどまることも市場の追い風。中国人1人当たりのコーヒーの年間平均消費量は22年に11.3杯。13年の3.2杯、21年の8.8杯からそれぞれ大きく伸びているものの、22年の世界平均75.2杯には大きな隔たりがある。若年層の飲用習慣は進んでいるものの、高齢者を中心に飲用しない層が一定数存在することが平均値を抑えていると考えられる。ブラジルは年平均376杯、米国は約289杯、日本は約207杯だった。
■多いヘビーユーザー
一方、インスタントコーヒーを利用する層は高い頻度で飲用していることも見て取れる。艾媒諮詢がインスタントコーヒーを利用する市民2800人以上を対象に今年9月に行った調査によると、1週間に1杯以上インスタントコーヒーを飲む人は調査対象の9割を超えた。このうち「毎日1杯」は23.1%、「毎日2杯以上」は36.4%で、毎日飲用する層が全体の約6割を占めた。
利用するシーン(複数回答)は「就業・学習時」が55.1%、「夜更かしする時」が54.7%、「自動車の運転時・外出時」が32.1%、「商談・会議時」が16.5%など。インスタントコーヒーを利用する理由は「眠気覚まし」(54.1%)、「利便性」(53.1%)、「味が好み」(45.3%)、「習慣」(43.7%)、「コストパフォーマンスの良さ」(39.1%)が上位に並んだ。
購入するインスタントコーヒーは1杯分に小分けしたスティックタイプ、袋タイプが好まれ、購入単価は1杯当たり「1.1~3元」「3.1~5元」と答えた人が全体の8割を占めた。
人気のインスタントコーヒーブランドは「ネスレ」、「瑞幸(ラッキン)」、「スターバックス」、「隅田川」、「三頓半」と続いた。価格と味わいのバランスを見てブランドを選ぶ傾向が出ている。近年は隅田川や三頓半をはじめ、新興ブランドが相次ぎ誕生している。
艾媒諮詢は、中国のコーヒー業界全体の市場規模が25年に1兆元に到達し、23年の予測値6178億元から約62%増えると見通した。
■ティーバッグの利用急拡大
各種の茶葉を小さな袋に包み湯の中に入れるだけで手軽に利用ができるティーバッグの市場も急速な成長を示している。
艾媒諮詢によると、ティーバッグの中国オンライン市場は15年に2億3000万元の規模。17年以降に成長カーブが大きくなり、18年は23億4000万元、20年は128億7000万元、22年は180億3000万元となった。23年は186億2000万元と予測し、25年には223億元市場になると見通した。
利用層は26~40歳の層が全体の8割を占め、オフィスワーカーが約4割。1級都市と2級都市での利用が8割となった。
市民約1600人を対象に実施した調査によると、好まれるティーバッグの種類は紅茶や緑茶など本来の茶葉の味が楽しめるタイプが1位となり、効能茶やハーブティー、穀物茶も人気。
艾媒諮詢は、利用の手軽さやコストパフォーマンスの高さ、種類の豊富さ、携帯の利便性などといったティーバッグの特性が若年層を中心に近年好まれていると指摘した。メーカー側がオンラインマーケティングや製品包装に力を入れていることも若年層に受け入れられている要因の一つという。(NNA)
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