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マレーシアの日本酒商談会に52蔵が出品 ジェトロ、市場の伸びは継続予想  NNA

2023.08.03

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 日本貿易振興機構(ジェトロ)クアラルンプール事務所は7月26日、マレーシアの首都クアラルンプールで「日本酒商談会」を開催した。日本から52の酒蔵が出品し、同事務所が開催する日本酒商談会としては過去最大規模となった。現地に入り売り込みを行った34蔵からはマレーシア市場への期待の声が聞かれ、同事務所は今後も日本酒の輸出は伸びが続くと見込んでいる。(写真上:商談会でサンプル展示された商品の一部=26日、クアラルンプール、NNA撮影)

 商談会は2部構成で、セッション1にはマレーシアで取引がない29蔵、セッション2には既に取引がある23蔵が商品を出品した。各セッションには、輸入業者、レストラン・小売店の運営業者約60社が参加したもよう。在マレーシア日本大使館の後援により、過去最大規模の日本酒商談会が実現した。

 ジェトロ・クアラルンプール事務所の小野沢麻衣所長は、マレーシアでは国民の購買力の高まりを背景に小売市場が拡大していると説明。「元々は富裕層が日系企業のメインターゲットだったが、今はアッパーミドル層も購買力を強めており、新型コロナウイルスの感染が落ち着いた今は市場開拓および拡大の好機」と話す。

 2022年の日本からマレーシアへの日本酒輸出額は6億2500万円で、前年の2倍近くに達した。小野沢氏は、新型コロナの感染拡大もあり、マレーシアのアルコール飲料市場は縮小傾向にあったが、日本からマレーシアへの輸出は伸びていると指摘。「マレーシア人の日本酒への関心は高まってきており、この基調はもうしばらく続く」との見方を示した。

 ただ、マレーシアのアルコール飲料市場における日本酒のシェアはまだ1%未満にとどまり、開拓の余地が大きい。小野沢氏は、手に取る機会を増やすことが求められているとし、「これまでは日本食レストランで主に出されてきたが、中華や西洋料理を提供するレストランでも日本酒が扱われるような広がりが必要」と説明した。

20230727myr001B001.jpg(日本酒商談会では52の酒蔵が出品し、マレーシアの輸入業者やレストラン・小売店の運営業者に売り込んだ=26日、クアラルンプール、NNA撮影)

飲食店から市場を拡大


 マレーシアで取引をしたことがない酒蔵からは、今後のマレーシア市場を有望視する声が聞かれた。島崎酒造(栃木県那須烏山市)は「熟露枯」の純米酒など2種類を出品。同社の島崎健一代表取締役は「思った以上にお酒を飲む人や富裕層が多いため、これからのマーケットと見ている」と話した。

 「富久長」純米吟醸と純米大吟醸、魚介類に合うよう仕込んだ「海風土」の計3品を出品した今田酒造本店(広島県東広島市)の今田美穂代表取締役は、世界20カ国・地域にすでに輸出をしているが、北米や欧州が取引のメインとなっていると説明。「東南アジアへの輸出を目指し、商品管理などを徹底してくれる取引先を見つけたい」と意欲を見せた。

 一方、すでにマレーシアでも取り扱われている「真澄」の蔵元である宮坂醸造(長野県諏訪市)の宮坂勝彦社長室室長は、マレーシアで日本酒の人気は高まっているが、日常的にスーパーマーケットで購入する人は少ないと指摘。「まずは多くの飲食店に卸すことで着実に(売り上げを)伸ばしていきたい」と述べた。

20230727myr001B003.jpg(商談会で日本酒を紹介する参加者ら=26日、クアラルンプール、NNA撮影)

 マレーシア人の利き酒師、ダニー・レオン氏によると、マレーシアでは幅広い年代が日本酒を楽しんでいる。20~30代には吟醸香や甘口の日本酒が人気である一方で、50代以上には辛口の日本酒が好まれているという。

 今後について、ダニー氏は日本酒にはさまざまな種類があるということを広めていく必要があると指摘。「高額なものがおいしいと勘違いしているマレーシア人もいる。価格に関係なく甘口や辛口など多くの味があると認知してもらうことで、日本酒市場はこれまで以上に拡大していくのではないか」との見方を示した。(NNA

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