国内資源の利活用重要に 肥料原料、調達が不安定化 中川純一 矢野経済研究所フードサイエンスユニット主任研究員
2023.03.15
日本は主な化学肥料の原料である尿素、リン酸アンモニウム(リン安)、塩化カリウムのほぼ全量を輸入に依存している。農林水産省によると、2020年度は尿素は輸入量の8割以上をマレーシアと中国に、リン安は9割を中国に、塩化カリウムは9割弱をカナダとロシア、ベラルーシに依存している。(写真はイメージ)
世界的な人口増加や経済発展に伴う食料需要の高まりに加え、コロナ禍に伴う物流の混乱やロシアのウクライナ侵攻による国際情勢の変化により、化学肥料の原料の国際価格が高騰しており、肥料原料の調達が不安定化している。
農林水産省が2月28日に発表した「農業物価指数(2020年=100)」で、肥料は23年1月時点で、22年1月から40.1%上がり154.7となった。使用量が多い高度化成肥料N15ーP15ーK15は、同様に51.2%上昇の170.3と、高騰している。こうした中、農林水産省は22年7月に、化学肥料の2割低減に取り組む農家に対し、肥料コスト上昇分の7割を補填する肥料高騰対策を講じている。
農業生産に欠かせない肥料原料の大半を少数の国に依存する状況は、食料安全保障上もリスクであり、調達先の多元化に加え、家畜のふん尿や下水汚泥、食品かすといった、肥料成分を含有する国内資源の活用が重要である。
国際的に環境負荷低減の取り組みが必要になっており、農林水産省も「みどりの食料システム戦略」を推進しており、この中で化学肥料の低減や堆肥を利用した土作りなどの持続的な調達を進めている。こうした中、現在、堆肥や下水などの国内資源肥料原料の利用を拡大し、輸入に依存した肥料原料からの転換を進めている。
農林水産省は肥料に関わる関係者が連携して国内資源の利用拡大に取り組む、全国推進協議会を発足させた。会員は肥料原料の供給者や肥料メーカー、肥料利用者(農業者)、地方自治体で、参加を希望する者は、農水省のホームページから会員登録することができる。同省は推進協議会の設置によりこうした動きを後押しし、全国で事業者が連携した取り組みを作り出したい意向である。
国内資源を原料とする肥料の普及を推進するためには、まずは排出事業者(下水処理場、食品工場、産業廃棄物処理事業者など)と、利用者(肥料メーカー、JAグループ、生産者など)が連携し、具体的な品質基準を置き、排出事業者と利用者が協議し、相互理解することが重要である。
特に下水汚泥や家畜ふん尿、食品かすなど地域の資源の事情に詳しい自治体の積極的な関与は必要不可欠である。まずは自治体の下水道関連部署と農政関連部署(農業試験場)が連携し、地域の残渣肥料の特性や、利用するための品質基準を互いに話し合うことが、国内未利用資源肥料の普及拡大の第一歩である。
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