未利用魚活用で対話 商品化で地域発展へ 佐々木ひろこ フードジャーナリスト(Chefs for the Blue代表理事)
2023.03.20
長く食と環境をテーマに書いてきたこともあって、私は法人での仕事以外に、個人でさまざまな食のプロジェクトに関わっている。そんな仕事の一つが、CCCKMKホールディングス主宰の「Tカードみんなのエシカルフードラボ」だ。
未来につながる食の循環をみんなでつくることをミッションに、いくつかの食関連プロジェクトが柱をなす中、海に直結するものとして「未利用魚活用プラットフォーム」がある。
水揚げ後、鮮度落ちが速かったりマイナー魚種だったり、小骨が多く処理が難しいなどの理由で有効に活用されていない魚(未成魚は除く)を使い、加工食品を作るのだが、その目的は単なる商品開発にとどまらない。
自治体、商工会、漁業協同組合などの地域、生産者、加工会社、商品を販売する流通、さらにはエシカル(倫理的)な視点をもつ生活者までがタッグを組み、それぞれの課題や想いをもとに対話を重ねながら、地域の発展と「持続可能な漁業」を形にするための商材をつくりあげていくのだ。
私の参画前だが、たとえば2019年にリリースした「五島のフィッシュハム」(写真)は、輸送距離やコストという離島のハンデを前に、安値の魚が捨てられる問題を解決しようと開発されたもの。
作る商品をフィッシュハムと定めたのは、スーパー利用者をアルコールの購買行動で分類し、Tカードが持つ7000万人の購買データを分析した結果、「プレミアムビールをよく飲み、洋風素材を料理する人」というターゲット層向け商品が有効と結論づけたからだ。
ブダイ、シイラ、トビウオなどを使い、スパイスを合わせた風味豊かなフィッシュハムは都内スーパーで販売されている。
同プラットフォームでは現在、愛媛県八幡浜市と千葉県船橋市の2地域の皆さんとご一緒するプロジェクトが進んでいる。
それぞれ、温暖化の影響で活性化が進み、海藻を食べすぎることで磯焼けの一原因となっているアイゴ、未成魚はコハダとして重用される一方、成魚になるとほとんど人の口に入らず養殖魚用飼料として低価格で取引されるコノシロを使い、地域の発展に資する商品にしようと多くの方々と対話を重ねている。
全員の想いが結実する商品ができるまで、まだ先は長いが、この過程も含めて皆で楽しみたいと思っている。
(Kyodo Weekly・政経週報 2023年3月6日号掲載)
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