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木造オフィスビル建設相次ぐ  都心・海外でも、CO²吸収

2023.02.06

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木造オフィスビル建設相次ぐ  都心・海外でも、CO²吸収の写真

 再開発に絡み、高層ビルの建設がラッシュとなる中、木造の高層オフィスビルの建設プロジェクトが相次ぐ。耐火・耐震技術の確立に加え、光合成により二酸化炭素(CO²)を吸収している木材を大規模に利用し、持続可能な社会の実現を目指す取り組みの一環だ。

 海外では地上39階、高さ182㍍の木造高層ビルプロジェクトも進んでいる。特に、首都・東京では建設プロジェクトが目白押しで、都心に木造高層ビルが林立する日も近いかもしれない。

 日本初の高層純木造耐火建築物が完成ー。昨年5月、大林組は自社の次世代型研修施設として、横浜市に柱から梁・床・壁すべての地上構造部材を木材とした11階建ての高層純木造耐火建築物「Port Plus」(写真:大林組提供)を建設したと発表した。

 純木造耐火建築物としては国内最高となる高さ44㍍で、木材の使用量は1990立方㍍に上る。これにより約1652㌧のCO²を長期間、安定的に固定することができる。

 材料製作をはじめ建設、解体・廃棄までのライフサイクル全体でも効果が大きい。鉄骨造(S造)に比べ、CO²削減効果は約1700㌧に上るという。

3時間耐火を実現


 木造が抱える課題の一つは耐火性だが、Port Plusは耐火性を高めるため、木の躯体に耐火ボードを張る技術で、従来の2時間耐火を上回る3時間耐火を実現した構造材「オメガウッド(耐火)」を使っている。

 耐震性についても、鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC造)と変わらない強度・剛性を確保するための接合法「十字形の剛接合仕口ユニット」など独自開発した技術を採用した。

 耐震性では「架構の損傷は生じない設計になっている。さらに大きな想定外の地震に対しても、架構に一部塑性化は起こっても、剛接合仕口ユニットの荷重保持能力が高いため、倒壊には至らない」(大林組)という。

 地上構造部材にコンクリートを使用しないため、コンクリート打設時の粉じんやほこり、大きな騒音などを抑制でき、周辺環境に配慮した施工を実現した。

 このほか、部材を事前に工場で製作することで高い施工品質を確保できるほか、施工スピードの向上により、1フロアの施工期間を鉄骨造の通常10日程度に対し、7日まで短縮できるなどメリットも大きい。

 さらに、大林組は豪ビルト社との共同企業体が豪シドニーで、木造ハイブリッド構造として世界で最も高い宿泊、店舗エリアを含む複合ビルを受注した。規模は地上39階、高さ182㍍で、26年の完成を目指し、22年8月に建設に着手した。

 三井不動産と竹中工務店は東京・中央区日本橋で、木造高層建築物として国内最大級となるハイブリッド木造の賃貸オフィスビルを建設する。23年に着工し25年の完成を目指す。構造材に使用する木材量は1000立方㍍超となる見込み。(下は2020年9月公表の完成予想パース)

230206三井竹中完成予想図.png

 三井不動産グループは北海道に東京ドーム約1000個分以上に匹敵する約5000㌶の森林を保有する。そのすべてで、「森林が持続可能な方法で適切に管理されていること」を評価・認証する制度である「SGEC認証」を取得。計画的な植林、育成、伐採などによる持続可能な森林経営を実施している。

 賃貸オフィスビルの想定規模は地上17階、高さ約70㍍、延べ床面積約2万6000平方㍍。主要な構造材に竹中工務店が開発した耐火集成材「燃エンウッド」を採用するなど、最先端の耐火・木造技術を導入する。

 木材は三井不動産グループが保有する森林のものをはじめ、国産材を積極的に使用していくことで、建築資材の自給自足、森林資源と地域経済の持続可能な好循環を実現させ、CO2排出の削減にも寄与するプロジェクトを目指していく。資金調達の手段として、グリーンボンドの発行などのESG(環境・社会・企業統治)ファイナンスも検討していく予定。

100メートル級も


 東京駅と皇居を結ぶ行幸通りに面した丸の内に、28年度にも木の使用量が世界最大規模となる地上20階、高さ100㍍のビルがお目見えする。東京海上ホールディングス、東京海上日動火災保険が22年8月、東京海上日動ビル本館・新館を一体で建て替える新・本店ビルのデザイン(基本設計)をまとめたもの。

 詳細は明らかではないものの、構造部材である柱、床に国産木材を大量に使い、「木材の使用量は開示していないが、一つのオフィスビルに使用する量としては世界最大規模」(東京海上日動火災保険)となる見込み。(下は22年8月公表の完成イメージ)

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 新・本店ビルは24年12月に着工し、28年度の完成を予定している。国産木材を大量に使用することなどにより、一般的なビルに比べて建築時のCO²排出量を3割程度削減する。

 加えて、高効率の設備や地域冷暖房の採用、使用電力に100%再生可能エネルギーを導入する。また、丸の内で初めて地上部分を全館免震とするなどの高い災害対応力も備える。

(Kyodo Weekly・政経週報 2023年1月23日号掲載)

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