ご当地鍋で応援消費 地酒もセットで楽しむ 畠田千鶴 地域活性化センター
2023.01.09
鍋料理が恋しい季節になった。家族や仲間と鍋を囲んで、フーフーしながら食べる。鍋奉行は、火の強さや具材を入れるタイミング、食べごろを差配する。冬の日常風景であったが、ここ3年間は新型コロナの影響であまり見かけない。
また、最近では鍋料理の楽しみ方も変化している。アンテナショップ、通販サイト、ふるさと納税などで入手した「ご当地鍋」を味わう機会が増えている。ふるさと納税の人気ランキングには、鍋用のズワイガニや牛肉が上位に並ぶ。アンテナショップでは、自慢の鍋の食材(下関のふぐ、近江牛など)や調味料(ポン酢、柚子胡椒など)が販売されており、飲食コーナーでは本場の味を堪能することもできる。
品川駅前にある秋田県のアンテナショップ「あきた美彩館」の物販コーナーでは、秋田県を代表する郷土料理、きりたんぽ鍋やしょっつる鍋の食材がそろう。きりたんぽ鍋(写真:秋田県観光連盟提供)は、すりつぶしたごはんを棒に刺して焼いた「きりたんぽ」に、比内地鶏、長ネギ、セリ、マイタケ、ゴボウなどを加えて鶏ガラスープで煮る。しょっつる鍋は、ハタハタに野菜類を加えてハタハタの魚醤「しょっつる」のだし汁で煮る。
美彩館の江川店長によると、きりたんぽ鍋の材料は年間を通して販売しており、秋田の地酒も一緒に入手が可能とのこと。きりたんぽ鍋には、香りの高い吟醸酒がお薦めで、焼いたきりたんぽの香ばしさやセリなどの食材の香りが調和され"黄金の組み合わせ"を楽しめるそうだ。ダイニングコーナーには約70席あり、テーブル席のほかに、秋田杉の間、かまくらの間、なまはげの間といった三つの飲食空間があり、きりたんぽ鍋、稲庭うどん、地酒、おつまみに、いぶりがっこ(燻製にした大根の漬物)、ハタハタ寿司(飯寿司)など、秋田ならではの料理を味わえるのが人気だ。
しかし、江川店長は「忘年会、新年会など、夜の大口の予約はまだ回復していない」と言う。コロナ発生前に人気のあった催し、地酒飲み放題と料理がセットになった「あきた酒っこフェスタ」や国の重要無形民俗文化財のなまはげが店内を練り歩く「なまはげ夜会」も現在は休止している。
厳冬期に向かって、新型コロナの流行は第8波に入った。年末年始、仲間と大鍋をつつきながら、酒を酌み交わし、大いに盛り上がることは難しいかもしれない。せめて、出身地やご縁のある地域の特産品を購入し、味わいながら産地の応援をしたいと思う。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年12月26日号掲載)
最新記事
-
米粉代替作戦 小視曽四郎 農政ジャーナリスト 連載「グリーン&ブル...
コメがついに麺にも抜かれた、と総務省調査(2人以上家庭、平均世帯人員2.91人...
-
ウクライナ支援で一致 週間ニュースダイジェスト(4月16日~22日)
先進7カ国(G7)農相会合が宮崎市で、2日間の日程で開幕した(4月22日)。ウ...
-
健康食品市場9000億円超へ 23年度、ストレス・睡眠・肥満対策で堅...
矢野経済研究所がこのほど発刊した市場調査資料「2023年版 健康食品の市場実態...
-
幸福は口福から 安武郁子 食育実践ジャーナリスト 連載「口福の源」
人間の最後まで残る欲の一つである「食欲」(※)。おいしさを味わう幸せ「口福」。...
-
漁師さんが「かわいい」と気付いた日 中川めぐみ ウオー代表取締役 ...
水産の世界は物理的な距離よりも、精神的な距離が遠い。水産業界以外の方と、こんな...
-
花粉症対策でスギの伐採加速 週間ニュースダイジェスト(4月9日~15...
政府は首相官邸で花粉症対策を議論する初の関係閣僚会議を開き、岸田文雄首相は6月...
-
3杯目からうまくなる酒 石鎚酒造、時間かけ作り込む 連載「農大酵母...
日本酒の1回の仕込み量が10㌧を超えるような大型の蔵もあるが、石鎚酒造(愛媛県...
-
2030年に市場規模2100億円へ 食料変えるアグリ・フードテック ...
近年、激化する気候変動などの影響から、世界の食料事情が不安定さを増す中、アグリ...
-
リニューアル、地方進出活発に 動き出した自治体アンテナショップ 畠...
最近、自治体のアンテナショップの移転、リニューアル、新規出店が全国的に活発だ。...
-
福岡から全国区、そして世界へ 一風堂創業の河原成美さん 小川祥平 ...
「とんこつラーメンくさい街」。シンガーソングライターの前野健太さん=埼玉県出身...