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研究進むブルーカーボン  企業が技術開発、藻場育成

2022.12.26

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研究進むブルーカーボン  企業が技術開発、藻場育成の写真

 臨海に工場を持つ電力やゼネコン、鉄鋼といった企業が、カジメやアラメといった海藻の培養や育成に力を入れている。陸上で二酸化炭素(CO²)を吸収する植物などのグリーンカーボンに対し、海藻などによるCO²の吸収はブルーカーボンと呼ばれ、その吸収量の大きさが注目されている。近年、大型海藻類が衰退していることから、ブルーカーボン生態系の拡大に向け、消波ブロック、人工漁礁、海洋構造物などで藻場の再生・保全や海藻の大量培養技術の確立、生産を進めている。

 電源開発(Jパワー)は石炭灰と銅スラグを主原料とする消波ブロック(石炭灰重量ブロック)を使った、藻場造成実証実験に取り組んだ。過去6年間、北九州市の若松総合事業所で消波ブロックとして使用、設置したブロックには、藻場造成実験を通して藻類が活発に繁茂することを確認できているという。

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 上の写真(電源開発提供)はいずれも左が一般のコンクリートブロック、右が銅スラグモルタルブロック。左の写真は2015年10月の設置直後、右の写真は1年2カ月経過時点で、海藻が付着している。

素材の研究深める

 
 同社によると、他の素材を含めた比較検証で、被度(藻が繁茂している面積割合)データを対象として統計的に検定・評価した結果に有意差はないとの結論だった。ただCO²吸収量は被度より藻の量(光合成をする部分の量)で見るべきだとして、この点に着目した評価は継続中で、結果が出ていないとしている。

 石炭灰重量ブロックを敷設した護岸補修範囲(約1600平方㍍)などに繁茂した海藻に対するブルーカーボンクレジット(海洋生物によるCO²吸収量)を、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合に申請し、2021年末に民間施設案件で国内第1号の認証が決定した。認証を受けた16㌧のクレジットは当社単独で持っており、使途は現在検討中という。

 石炭灰重量ブロックはコンクリートと比較し、品質は同等ながら重量が2割程度重く、製造コストも2割ほど安い。石炭灰重量モルタルは、既存のコンクリートプラントより簡易な設備での品質管理・製造が可能な素材。簡易製造設備の設計・試作を準備中で、この設備を用いて社内外工事などで製造・利用していく考えだ。

 ゼネコンも精力的に取り組んでいる。今夏、鹿島建設はアラメやカジメといった多年生大型海藻類をいつでも大量培養できる技術を確立したと発表した。胞子を放出できる成熟した母藻をあらかじめ採取し、その母藻が放出する胞子のオスとメスを配偶体として保存液に長期間保存し、随時、浮遊状態にして大量培養できる技術だ。

 同社技術研究所の葉山水域環境実験場(神奈川県)では、人工漁礁に大量培養した配偶体由来の海藻の幼芽を付けて試験をしたところ、海藻の順調な成長を確認した。今後、こうした技術を沿岸生態系の保全や漁業振興につながる藻場再生へと展開していく。

構造物への付着を検証


 海洋土木が強みの中堅ゼネコン、東亜建設工業はブルーカーボン生態系の拡大に向け、直立の護岸など港湾構造物への海藻着生技術の開発を目指し、横浜港南本牧ふ頭の直立港湾構造物に海藻の着生・生育を促す着生基盤を設置して効果を検証している。

 実験基盤は角部を有する突起形状を導入した着生基盤だが、その特性をうまく利用し、緑藻類が基盤の角部分を起点として上面と側面の面積の約半分を覆うように着生しているという。今後、多様な海藻がより効果的・効率的に着生・生育しやすい形状や方策を検討する方針だ。

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(設置後約1年で実験基盤に付着した緑藻類=緑色部分)


 同社によると、着生基盤の形としては、実験基盤の三角突起形状のほか、三角突起の形状を少し変えたものや、三角突起の大きさを小さくしたもの、平板の表面に砕石を埋め込んで凹凸形状にしたもの、平板の表面を多孔状にしたものを検討している。

 積極的に海藻を導入する方法も構想中で、ロープにワカメの種糸を差し込んだ種付けロープを着生基盤の前面に設置し、ロープに生育したワカメ(めかぶの部分)からワカメのタネを着生基盤に供給するといった方法も考えられるという。

 政府は港湾の脱炭素化を目指す「カーボンニュートラルポート(CNP)」づくりで、海草・藻類によるブルーカーボンの形成も、港湾の脱炭素化の一つの施策と位置付けている。港湾構造物に海藻を繁茂させる同社の技術は、その目的にかなうもので現在、開発を進めると同時に、展開方策についても検討している。

臨海製鉄所を生かす


 日本製鉄は昨年春、グループ会社などとマリンバイオマス(海藻)の多角的製鉄利用に資する技術開発に着手した。臨海製鉄所という地の利を生かして海藻を生産する。

 バイオマスの「地産地消」という新たなサプライチェーンの構築を目指し、製鉄プロセスで発生する鉄鋼スラグを利用した藻場造成で培った技術を生かして、海藻が減少する「磯焼け」対策として海藻の積極的な育種に取り組んでいる。

 海藻などでCO²を吸収させると同時に、その海藻を製鉄などに利用するユニークな研究についても検討する。海藻を製鉄プロセスの中で炭素源(炭材や炭素材料)として活用する。

 日本では現在、大気中から吸収されたCO²量をクレジットとして認証し、企業へ販売する取り組みが行われており、今後、日本が主導する国際的な枠組みの整備が期待されている。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年12月12日号掲載)

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