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復活なるか音楽あふれる街  佐世保、エンタメ再構築を  陣内純英 西海みずき信用組合理事長

2022.12.26

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復活なるか音楽あふれる街  佐世保、エンタメ再構築を  陣内純英 西海みずき信用組合理事長の写真

 佐世保にUターンして5年になるが、コロナ禍もあって夜の街を深く探訪することはなかった。「それはもったいない」と、同窓生が行きつけのライブバーに連れて行ってくれた。華やかな照明の中で専属バンドがアメリカンオールディーズのナンバーを次々と演奏する。常連さんや米海軍のお客さんとノリノリでスイングした。(写真:佐世保の「グッドタイムズロール」でのHiromi&The Skylinersのステージ=11月26日、筆者撮影)

 あまりに楽しかったので、翌週はジャズカフェ巡りが趣味という新入職員を連れて行った。祖父が生まれたころの曲だが、軽快な音楽と派手な照明に大はしゃぎ。最近、昭和レトロがZ世代に人気と聞くが、オールディーズもいけるかもしれない。

 基地のまち佐世保は、かつて九州一のエンタメの街でもあった。最盛期は、戦後の連合国軍の駐留から朝鮮動乱の時代。20を超えるキャバレーやダンスホールがあり、中にはダンサー120人を擁する巨大な店もあった。ミュージシャンも多く、とくにジャズマンは全国から200人以上が集まり「ジャズの聖地」と呼ばれていたという。

 朝鮮特需が終わると、キャバレーなどは次々と閉店し映画館に変わっていった。その映画館も今や1館を残すのみ。アメリカンミュージックの演奏が聞ける店は、ジャズの名店「イーゼル」や私が訪れた「グッドタイムズロール」など数えるほどになっている。

 ミュージシャンやダンサーもハウステンボスを除けば少数で、その多くは、他に職業を持つ兼業エンターテイナーのようだ。このようにエンタメ産業は、石炭や造船と同様、斜陽産業だったのかもしれない。

 しかし、今後は、佐世保流のエンタメ産業の復活が、街の発展の鍵を握るかもしれない。佐世保には今も米海軍基地がある。その名も「アメリカ」という強襲揚陸艦が母港とするほどの重要な基地で、軍人・軍属・家族を合わせて約7000人が居住している。

 中心歓楽街の一角、基地の出入口に近いところに外国人バー街があるが、円安もあって最近は大盛況。週末ともなると何百人もが通りにあふれ、店からはヒップホップの軽快な音楽が漏れてくる。佐世保は今もアメリカンミュージックが似合うかっこいい街だ。そこを強みにエンタメ産業の再構築ができないものか。

 コロナ禍の終焉とともにインバウンドが復活し、2020年に完成した九州最大のクルーズ船ターミナルが日の目を見る日も近いだろう。寄港後大型バスで免税店直行というのではなく、佐世保でエンタメを楽しむことを目的としたツアーが組まれるようになるとよい。佐世保を代表するエンタメ施設ハウステンボスの営業時間は通常、平日・日曜は午後9時、土曜日午後10時までだ。ナイトタイムエコノミーは、鉄道・車で25分の距離にある佐世保市の中心歓楽街が受け持つとよい。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年12月12日号掲載)

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