暮らす

瓶詰めウニ発祥の地  下関市の六連島  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2022.11.28

ツイート

瓶詰めウニ発祥の地  下関市の六連島  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 山口県下関市には、響灘に浮かぶ二つの有人離島がある。一つが面積2.32平方㌔に84人(今年4月現在)が居住する蓋井島であり、今一つが今回ご紹介する六連島(むつれじま)である。六連島は下関市の西約4㌔に位置する溶岩台地の島であり、面積0.69平方㌔に87人(同)が居住している。下関市営渡船が、竹崎桟橋から1日4往復(夏季5往復)しており、20分で渡ることができる。この島を紹介するキャッチコピーは、「日本最古級の洋式灯台のある花の島」というものである。

 島の中央部にある肥沃な台地では、温暖な気候を生かしてキャベツなどの露地野菜の栽培が行われてきたが、最近では菊やカーネーション、ガーベラなどの花卉のハウス栽培が盛んになっている。収穫された花々は、花卉運搬船によって下関市や福岡県北九州市などに出荷されている。

 六連島灯台は、日米和親条約で決まった兵庫開港(現在の神戸港)に備えて、1867(慶応3)年4月の大坂約定(大坂条約)により建設された五つの灯台の一つとして、英国人技師らにより建設され、1871年11月に初点灯された、高さ約11㍍の洋式石造の灯台である。日本で最古の洋式灯台の一つに数えられ、外観はほぼ当時のままの姿に保たれている。1872年6月に、九州へ行幸される途上にあった明治天皇が、西郷隆盛を同行させて立ち寄られ、視察されたことでも有名である。2020年には国の重要文化財に指定された。

 島の中央の小高い丘には、国内では唯一、世界でも3カ所しかないといわれる「雲母玄武岩」がある。これは、火山活動により噴出した高熱のマグマが、海水で急激に冷却されることにより、玄武岩の中に無数の小さな穴ができ、その内側に4㍉ほどの光を放つ黒雲母と角閃石の結晶が生じた、大変珍しいものである。

 六連島から約300㍍離れたところに馬島がある。馬島は福岡県北九州市小倉北区に属しており、この両島間の海峡が県境になっている。馬島の住民は長らく井戸水を生活用水の頼りにしてきたが、水質悪化と水量不足が深刻化し、1998年からは飲料水を本土から船で運搬するようになった。台風やしけなどにより不安定であった馬島の水事情は、2004年に六連島から海底送水管により分水されるようになって改善し、現在では下関市の給水区域に編入されている。

 さて、下関の名産品として全国的にも有名なウニの瓶詰めの加工技術は、もともと六連島が発祥の地であり、江戸時代には藩主献上用として日持ちのする塩漬けが考案されていた。

 1887年のある日、島を訪れた外国人水先案内人が西教寺の住職と歓談していたところ、杯に注ごうとした酒が誤って塩漬けウニの小鉢にこぼれてしまった。それを口に含むと意外に美味だったことから、塩漬けウニの業者に研究させ、現在の瓶詰めウニ(写真:筆者撮影)の定着に至っている。ちなみに、こぼれた酒はオランダ・アムステルダム産のジン(45度)だったそうである。この逸話を思い出しながら食するのも一興でないだろうか。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年11月14日号掲載)

最新記事