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「一緒にできること」を探る  外国籍労働者と話し合い  田中夏子 長野県高齢者生活協同組合理事長

2022.11.07

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「一緒にできること」を探る  外国籍労働者と話し合い  田中夏子 長野県高齢者生活協同組合理事長の写真

 数年前から、私の住む信州でも外国籍の労働者が過酷な働き方の末に亡くなったり、切羽詰まった暮らしの中で事件に巻き込まれたりした出来事がたびたび報じられています。

 2年前には、近隣で悪天候の中、無理を押して野菜の植え付け作業をしていたスリランカ、タイ出身の2人が落雷で命を落としました。信州には高原野菜産地が広がりますが、産地を擁する自治体では住民の6%が外国籍というケースもあります。野菜産地だけではありません。介護や医療、近くの中小の製造業の現場でも、技能実習生を中心に多くの外国籍の人たちによって地域の暮らしと産業が支えられている姿が、報道もあって、あらためて浮き彫りになりました。

 同時に、これだけ「地域社会」の隣人として大きな存在でありながら、私たちは外国籍の人たちを遠巻きに見ているだけで、一緒に活動したり、その声に耳を傾ける機会がいかに少なかったかを痛感するようになりました。

 市民の学習会などで、そうしたことが少しずつ話題になり始めた昨年、このまま素通りできないとの思いで20人弱の市民が集まり、まずは実態を知ろうと、支援活動に奔走する弁護士や労働団体から話を聞くなどしました。

 第一線の支援とまではいかなくとも、「同じ地域に生きる市民」という立場で何ができるか|。話し合いを重ね、まずは日本語教室を立ち上げ、「一緒にできること」を探ることになりました。この7月に始動したばかりの活動です。近くの金属加工の工場で働く7人のベトナムからの技能実習生が参加してくれることになりました。

 普段は仕事中も、仕事が終わった後も、日本人の従業員と言葉を交わす機会がないといいます。教室では、日本語のマスターより先に、母国の地図を広げ、出身都市を教えてもらい、その地がどんなところか、どんな暮らしぶりなのか、どんな特産品があるのかなど、日本人スタッフが教えてもらうところから始めています。

 4回ほど実施したところ、8月に入って新型コロナウイルスの猛威が再来、秋口からは工場が繁忙期となり、一時中断しています。故郷の老親ら家族、技能実習期間後の人生設計など、彼らの話には胸を締め付けられる内容も多く、しばらくは「何か一緒に」を地道に探していきたいと感じています。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年10月24日号掲載)

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