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失われる政策の根拠  農水省「集落調査」廃止方針  小視曽四郎 農政ジャーナリスト

2022.10.31

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失われる政策の根拠  農水省「集落調査」廃止方針  小視曽四郎 農政ジャーナリストの写真

 農林水産省が5年ごとに行う農林業センサスの農業集落調査を廃止すると発表した。これに対し自治体や農業関係者らが反発している。(写真はイメージ)

 集落は地域社会の基礎単位だ。全国に13.8万(2020年度)あり、農家による共同会議である「寄り合い」の模様などを通じ、農山村が構造的にどう変化しているかなどを調べるのが農業集落調査の狙いだ。

 始まりは1929(昭和4)年で、戦後は2020年までに15回実施している。調査対象は寄り合いの開催、ため池の管理、集落共有財産ーなど、多項目にわたる。民俗学的な意味で集落共有行事の計画や開催、環境美化、自然環境の保全についても調べている。

 かなりしっかりした調査だけに「地域政策の推進上、重要な根拠」(大学研究者)になるのだ。それが次回の25年センサスから廃止となっては、「政策立案上、致命的」との声も上がる。

 農水省はなぜやめるのか。一言で言えば長年の行革による出先の地方農政局調査担当職員の減少だ。22年度は約1000人いるが、06年度の4分の1に縮小している。

 「『集落への思い』が薄まっているからやめる、というのが本音ではないか」(同)の声が聞かれる。「中山間地域等直接支払いの集落連携加算」など、現行政策の維持・継続に不可欠であるとの指摘もある。

 コメの生産調整や農地の整理・集約、田畑輪換、農作業の受託・委託、草刈りなど、農業の現場では地域・集落内の意思疎通や連携・協力が大前提だ。災害防止と直結した水管理や森林管理とも絡む。

 それらは農水省の指示を受けたものが大半であり、同省は独自の調査データを基に政策を立案しているから、政府中枢や財政当局に堂々と説明や予算要求ができている。

 農業には地域が進めた話し合いの結果に助成する施策が多い。農地の集積や耕作放棄地を回避する粗放管理、水田の畑地化支援をめぐる調整といった現場農家の話し合いがうまくいって初めて、施策が進む。

 農業集落調査のデータは、農水省の存在価値をなす基盤データと言っていい。同省の担当者は「廃止と決まったわけではないし、仮に廃止しても集落調査全てがなくなるわけではない」と釈明している。

 しかしあるジャーナリストは「集落調査廃止は省の存在理由の一角を放棄するようなもの。それが分からないほど農水官僚は劣化しているのか」と嘆く。

  農水省は先ごろ、食料安全保障政策の立案に向け、食料・農業・農村基本法の検証部会をスタートとした。食料安保確立を最重要課題とする現場通の野村哲郎農相が、安易に調査廃止をのむとは思えない。なぜなら食料安保の確保にはかなり長い時間と、農業現場の活性化が必要だからだ。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年10月17日号掲載)

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