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ご飯にかけて、絶品・島たまご  瀬戸内海の佐木島  小島愛之助 日本離島センター専務理事

2022.09.19

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ご飯にかけて、絶品・島たまご  瀬戸内海の佐木島  小島愛之助 日本離島センター専務理事の写真

 瀬戸内海のほぼ中央、広島県の南東部に位置する三原市には、有人離島が二つある。

 三原駅から徒歩5分の三原港を出発し、高速船で13分で到着するのが小佐木島(こさぎじま)、日本一新幹線から近い有人離島である。面積0.5平方㌔、周囲3.2㌔の島の住民は現在わずか4人に過ぎない。

 昭和30年代に木造船で栄え、人口が140人を超えていた時代とは様変わりである。こうした状況下、公益財団法人ポエック里海財団により「小佐木島ビオアイル計画」が発足し、地域活性化が進められている。

 小佐木島から直線距離で300㍍ほどの位置にあるのが佐木島(さぎしま)である。面積8.71平方㌔の島に約600人の住民が居住している。佐木島の最高峰は大平山(標高268㍍)で、「しま山100選」にも選ばれている。

 安芸の宮島に祭られている「市杵島姫命」が宮島に定住する以前に大平山に登られたが、草むらから聞こえたキジの声に驚かれ、山から飛び降り去っていかれたという伝説があり、飛び降りた際に勢いで二つに割れたとされる「割石」が残っている。

 佐木島といえば、トライアスロン大会を忘れてはならない。1990年に第1回を開催し30回を数えている伝統的なイベントである。島の南西部にある向田港付近をスタート・ゴール地点として、水泳1.5㌔、自転車42㌔、マラソン10㌔のレースが繰り広げられている。

 佐木島のもう一つの名所が向田港にほど近いところにある「塔の峰千本桜」だ。小高い山の一面に桜の木が1000本以上植えられており、満開の時期には桜色のトンネルが出来上がる絶景ポイントである。もともとはミカン畑であったが、地域住民が一念発起し、三原市から苗木の提供を受け、1995年から植樹を始めたのが発端である。

 この取り組みは「全国育樹活動コンクール」で林野庁長官賞を授与されている。住民の地道な努力のたまものにより、ほとんど隙間なく植樹されているため、その様は正に圧巻の一言に尽きる。

 さて佐木島には「みかんじまプロジェクト」という活性化事業があり、その一環で進めらている「瀬戸内柑太郎(かんたろう)島たまご(写真)」プロジェクトをご紹介したい。

 この取り組みの主役はもともと養鶏を手掛けていた堀本さん御夫妻である。コーチン種の鶏を耕作放棄地などを活用して、ストレスをためないように平飼いを行い、これまで捨てられていた青みかんや魚粉、海藻などを与えて、栄養価の高いたまごを生産されている。

 ちなみに一般的なたまごと比べると、βカロテンが31倍、ビタミンAが1.3倍、DHAが2.4倍、EPAがマグロの赤身と同等という栄養価の高さが立証されている。

 きめ細やかでコクのある黄身と濃厚な白身が特徴の絶品である。たまごかけご飯にするのが1番といわれたので、買って帰って3日3晩試してみたが、まさにその通り、おすすめである。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年9月5日号掲載)

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