アンテナショップも情報発信 地域が取り組むSDGs 畠田千鶴 地域活性化センター
2022.07.18
2015年の国連サミットで加盟国の全会一致で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、日本各地でも地域特性に合ったゴールを設け、2030年の達成を目指している。内閣府が2021年度に行った全国アンケート調査では、自治体の52.1%が「地方創生SDGs達成に向けて推進している」と報告された。
都内の自治体アンテナショップでも、賞味期限間近の食品のセール、特製エコバッグの販売などを実施しているが、地域のSDGsの取り組みを発信することも重要だ。
日本橋にある滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」が展開するSDGsのプロモーションは興味深い。子どもを対象とした「信楽焼たぬきの制作体験」では、小学校で配布される環境情報誌「エコチル」に募集記事を掲載し、定員24人に対して1546人もの応募者を集めた。
また、今年4月の店舗リニューアル時には、「SDGsスペシャルミニステージ」が開催され、国連と協働で世界にSDGsを広げる活動をするサンリオの「ハローキティ」と彦根市のキャラクター「ひこにゃん」が登場し大いに盛り上げた。(写真:4月29日=ここ滋賀提供)
滋賀県にははるか以前からSDGsに通じる生活様式があった。母なる湖「琵琶湖」の水質保全のための、合成洗剤の削減、琵琶湖の一斉清掃など市民の参加が定着し、行政も環境教育に力を入れている。約40年間にわたって、県内の全小学5年生が1泊2日で体験学習船「うみのこ」に乗って、琵琶湖上で環境について学ぶ機会を設けている。
ここ滋賀では、プラごみ削減や食品ロスなどSDGs関連商品も取り扱っている。カートカン(紙製の缶)入りの緑茶飲料や、規格外の果物を商品開発したドライフルーツなどだ。
2020年グッドデザイン賞を受賞した、近江八幡市の「みいちゃんのお菓子工房」の商品も販売されている。店長兼パティシエとして活動するのは、家以外の場所(学校など)で話ができない発達障がい「場面緘黙(かんもく)症」の14歳の少女である。
ここ滋賀のスタッフの「ひいき目じゃなくて、本当においしい」という言葉と生産に至るまでの経緯を聞くと、買ってみたくなった。筆者が買った焼き菓子"ブールドネージュ"はおいしかった。他のお菓子にも興味を持ち、HPを検索し理解が深まる。そして、この小さなビジネスを応援したくなる。
社会的な活動が商売を繁盛させることがある。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の近江商人の経営哲学「三方よし」の教訓は、SDGsの理念「誰一人取り残さない」に通じているようだ。ここ滋賀の入り口の貼紙には、「『三方よし』は現在のCSR(企業の社会的責任)やSDGsにつながる...」と書かれていた。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年7月4日号掲載)
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