メタン抑制飼料の効果など測定 肉牛事業協同組合、東京農大と共同事業
2022.06.17
肉用牛の生産者らがつくる全国肉牛事業協同組合(中林正悦理事長)と東京農業大学(江口文陽学長)は17日、カシューナッツ殻から抽出した液体を混ぜた飼料を使うなどの実証を進め、牛のげっぷや排せつ物から発生する温室効果ガスを削減する事業を共同で進める契約を結んだ。
畜産で発生する温室効果ガスには、牛などのげっぷから発生するメタン、排せつ物管理の過程で発生する一酸化二窒素などがある。農林水産省などによると、日本の温室効果ガスの年間総排出量(2019年度)のうち3.9%が農林水産分野で、うち28.6%を畜産業が占める。
畜産業者にも排出削減が求められているが、和牛生産者ら現場は温室効果ガス発生の実態把握が難しく、削減に取り組みにくくなっている。
17日に東京で行った記者会見で中林・同組合理事長は「発生の実態と削減策を科学的に明確にして可視化し、生産業者の取り組みにつなげて、牛が悪者視されることのないようにしたい」と説明した。東農大の岩田尚孝農学部動物科学科教授は「和牛の温室効果ガス発生に関する論文はこれまでほぼない。和牛は海外でも食べられており、今回の取り組みは和牛をさらにアピールすることにもなる」と述べた。
共同で進める事業は①メタン菌抑制飼料給与による噯気(げっぷ)中メタン削減実証実験②堆肥処理過程における一酸化二窒素削減実証事業ーなど。①では北海道、福島県、鹿児島県の牧場でそれぞれ100頭規模の和牛を3区に分けて飼育。カシューナッツ殻液混合飼料を与える比率を変え、メタン削減の効果を測定する。
共同事業は日本中央競馬会(JRA)の支援(畜産振興事業)を得て、2022年度から3年間実施。カシューナッツ殻液混合飼料を製造する出光興産、伊藤ハム米久ホールディングスなども協力する。(写真:全国肉牛事業協同組合、東京農業大学などの同事業に参加・協力する関係者)
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