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伸びる長期・常温保存食品  まとめ買い、食品ロス削減で需要

2022.06.06

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 216日間保存可能な豆腐、91日間保存できる牛乳、賞味期限が55日以上のパンー。常温で長期間保存できるロングライフ食品の存在感が増している。コロナ禍にあって、買い物回数を抑えるまとめ買いや、災害時に備えた備蓄、賞味期限切れによる食品ロスの削減など、消費者がロングライフ食品を再認識し、消費行動を変化させている。こうした変化に合わせ、食品メーカーも消費期限を長くするなど、強化する動きが目立っている。

EC限定の商品


 コロナ禍により、巣ごもり生活で通販需要が高まる昨年7月末、森永乳業は7.2カ月(216日)の長期・常温保存が可能なEC(電子商取引)限定の「国産大豆絹とうふ」を発売した(写真左)。共働き世帯数の増加やスマホの普及などによるEC市場の伸びをにらんだもので、「ケース売り(12個)だが、2ケースのまとめ買いも増えてきた。自宅でストックするだけではなく、親族や友人へも分けて消費されているようだ」と売れ行きは順調という。

 同社は1989年に冷蔵で10カ月保存できる「森永とうふ」シリーズを宅配専用商品として牛乳販売店を通じて発売。その後、2019年1月には賞味期限が常温で6.4カ月の常温対応商品を国内で初めて商品化した。18年に国内で豆腐の規格基準、食品表示基準が改正され、無菌充塡豆腐の常温販売が解禁されたのを受けたもの。さらに、19年7月には賞味期限を7.2カ月に延長した。

 消費者のロングライフ豆腐の購入動機としては「長期・常温保存ができるほか、保存料を使っていない点が挙げられる」という。また、国産大豆絹とうふの購入後の感想として多いのは、「味がおいしい」「常温保存ができ、賞味期限が長いから便利」など。

 常温保存できる豆腐は最近もスーパーなどの店頭にお目見えしているが、菓子メーカーの井村屋(津市)は昨年12月、冷蔵で賞味期間が180日間の「美し(うまし)豆腐 LONG SHELF LIFE 180」を発売した(写真中)。1個75㌘の食べきりサイズ。「豆腐の概念を180度変える!賞味期間180日間!」がキャッチフレーズで、独自製法による長期保存が可能な特徴を生かし、備蓄食品として消費した分だけ補充する「ローリングストック」を推奨、海外市場への展開も進めている。

 「全体として売り上げのボリュームは大きくないが、海外では香港への販売が順調に進んでいる」とし、「海外向けでは、豆腐そのもののおいしさや、小さい充填豆腐がない現地で形態が評価されている」という。一方、国内では「一部の小売店で取り扱ってもらっているが、これから案内を進めていく段階」だ。

 「問屋からはロングライフの取り扱いやすさが好評」なものの、「ロングライフであることは、最終消費者にはそれほど響いていないようだ」と訴求は今後の課題だ。

消費期限を延長


 スーパーの店頭などに並ぶ牛乳の多くは「日配品」。冷蔵保存で、未開封時の賞味期限は1週間~10日程度。明治は1月、北海道産生乳を100%使用し、賞味期限を伸ばし、常温で91日の長期保存が可能な「明治特選北海道牛乳」を発売した(写真右)。それまで販売していた「明治北海道牛乳200ml」より賞味期限を伸ばしたもので、「おいしい」「飲みやすい」「賞味期限が長いのでストックしておける」と好評だという。

 新型コロナウイルス感染症の影響により市場として小容量タイプが苦戦している中、「牛乳市場では食品ロス意識の高まりなどを背景にロングライフ牛乳の生産量は中長期的に拡大傾向で、健闘している」という。

 さらに、明治は「コロナ禍以降の消費者意識の変化のひとつに、『メリハリ消費』といった『普段より少しよいものを買う』傾向がある」と指摘する。

 これらの背景から、「ロングライフ牛乳に抱かれるような『なんとなく常温保存が可能で安い』といった固定概念を払拭する、差別化された新商品として明治特選北海道牛乳を発売」した。市場(流通)の反応としては、「こうした発売目的などに賛同いただき、本商品発売を機に、スーパーなどの複数の量販店で新規で採用」されている。

 パネトーネ種を生地に使うロングライフパンも珍しくない。Pascoブランドの敷島製パンは20年4月、3543日だった消費期限を、製法の改良により5568日と大幅に長くした常温保存の「ロングライフブレッド」をオンラインなどで販売している。

 「消費期限の延長とコロナ禍の時期が重なり、売り上げは好調に推移」しており、「店頭では販売の見切りやチャンスロスが減った。特に通販では巣ごもり需要が続いており、消費期限延長前と比べて4倍以上の売り上げ」で推移している。「今後は消費期限の年月表示化を目標に3カ月以上を目指し、お客や取引先の在庫管理問題を解決していきたい」と意気込む。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年5月23日号掲載)

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