地域をキャンパスに リーダー育成の取り組み 陣内純英 西海みずき信用組合理事長
2022.05.16
私たちの信用組合では、長崎県立大のカリキュラムの運営に協力することにした。約300人の学生がチームに別れ地域の企業に出向き、経営課題を把握し、その解決に向け調査分析し提言をまとめるという内容だ。
地元企業に協力を呼びかけたところ、ぜひ若い人の考えを聞きたいと、多くの企業の手が挙がった。当組合自身にも10人の学生さんが学期中6日間来訪し、当組合の経営課題に向き合う予定だ。学生がフィールドワークなどで地域と関わる機会つくることは、企業にもメリットがあり、学生も実践的な勉強ができる、"ウィンウィン"の取り組みだ。(写真:地域実践活動で訪れた西海みずき信用組合で説明を聞く学生たち=4月15日、筆者撮影)
このように最近は学生の地域実践活動に力を入れている学校は多いようだが、地域(産地)をまるごとキャンパスにしようという大学が現れた。私の前任地、金属加工を中心とした中小企業の街の新潟県燕三条に2021年に開校したばかりの三条市立大だ。
工学部だけの単科大学で、1学年の定員は70人程度だ。先般、燕三条の製造業者の組織である三条工業会主催のリモートセミナーに誘われ、学長の説明を拝聴した。同校のカリキュラムの特徴は、インターンシップに多くの時間を割いていることだ。2年生は2週間ずつ三つの企業で、3年生では1社で16週間インターンシップを行う。そのため地元製造業など100社以上が協力するという。どのような融合反応が表れるか注目だ。
中小企業の情報はなかなか学生に届かない。だから就職活動の対象にもならないというのが現状だ。インターンシップや地域実践活動を通じて中小企業のことを知れば、自分の力を発揮する場がここにあることに気付く学生も多いだろう。
中小企業の経営に携わることになれば、大企業や役所に勤めるより、はるかに大きな裁量権を得て存分に手腕を発揮できる。思い切ったチャレンジもでき、町工場を世界的な企業に育てることも夢ではない。事業の傍ら地域とも積極的にかかわっていけば、地域社会のリーダーとしても活躍できる。会社が業績を上げれば大企業サラリーマンを凌駕する報酬を得られ、オフィス、社用車、保養施設なども自分好みに整備できる。
実践的な知識・技能を身につけた優秀な学生が地元企業に入り、経営に携わるようになれば、後継者も含め人材不足に悩む地方の中小企業にとってどんなに助けになることか。これにより産地全体の技術力・生産性が高まれば、ますますよい人材・よい技術が集積するようになり、さらなる成長の歯車が回りだす。
才能とチャレンジ精神のある若者には、地方の中小企業の経営人材を目指してほしい。一度大企業や役所で修行した後、学生時代に過ごした街に戻るのもよい。いつでも大歓迎で迎えてくれるだろう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年5月2日号掲載)
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