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高齢者は現役世代サポートを  少子化に知恵絞るとき  藤波匠 日本総合研究所調査部上席主任研究員

2022.05.02

高齢者は現役世代サポートを  少子化に知恵絞るとき  藤波匠 日本総合研究所調査部上席主任研究員の写真

 少子化が深刻です。2015年ごろまで、年率1%程度で推移してきた出生数の減少率が、2016年以降は3.5%に跳ね上がりました。もちろん、出産期にあたる女性数のすう勢的な減少や婚姻率の低下が少子化の原因であることは変わりませんが、足元では婚姻女性の出生率を意味する有配偶出生率の低下が無視できない状況となってきました。

 有配偶出生率の低下はとりわけ若い世代で顕著で、彼らの出生意欲が徐々に下がってきていることを表しています。子どもはいらない、あるいは1人で十分と考える若者が増えているということです。有配偶出生率の低下は、若い世代がおかれた社会環境の厳しさを映す鏡かもしれません。賃金が上がらず、所得格差が顕著となり、若い世代が未来に対して希望を持てなくなってきていることの証しです。

 足元で進む急速な物価の上昇への対応策として、年金受給者に対して一律5000円の臨時特別給付金を支給する案が持ち上がりました。今回は、各方面からの反対でいったん見送られることになりましたが、こうした案が出てくること自体、若い世代の窮状に目が向けられないわが国の現状を表しているのかもしれません。

 若い世代の出生意欲が低下する背景には、若い世代に負担を押し付けつつ、彼らの貢献に期待する高齢社会の負の側面がみえてきます。年配者に比べて実質賃金は抑えられたままであるにもかかわらず、高齢社会を支える財源を今後長く負わされるのは若い世代です。その子どもたちに夢や希望に満ちあふれた社会をつないでいくという理想からはかけ離れた現状が、出生意欲の低下につながっているのかもしれません。

 いま求められるのは、高齢世代が、若い人の貢献に期待するのではなく、若い人たちをサポートすることです。大きな話でいえば、現役世代の所得を引き上げることなどにより、次世代に豊かな社会をつなぎ、より多くの人たちが子どもを持ち、子育てしたいと思える社会をつくることに、年配者が努力を惜しまないことです。

 地域社会においても、若い人たちに高齢化したコミュニティーを支えてもらおうとするのではなく、彼らのために何ができるのかを考えることが必要です。賃金の高い仕事を作ることも重要ですし、なにより若い人たちが生き生きと活躍できる地域社会を構築することが求められていると思います。

 島根県江津市に拠点を置き、まちづくりを目的とするあるNPOで見聞した話です。当時そのNPOの代表者は地元出身のご高齢の方でしたが、活動方針の策定や実際の運営は、若い世代が担っていました。高齢の代表者は、若い方の活動がスムーズに進むよう、裏方として資金繰りやネットワークの構築に尽力されておられました。

 中国地方は、過疎という言葉が生まれた地といわれるほど、早い時期から人口流出が顕在化した地域でした。若い世代が急速に減少する中で、自然発生的に若い人を尊重する風土が生まれ、彼らを支えようという年配者が現れるようになったとのことです。

 若い人たちが未来に希望を持てる社会を作るために知恵を絞り、行動していきたいと思っています。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年4月18日号掲載)

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