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冷凍食品市場、コロナで拡大  専門スーパー、冷凍庫も

2022.03.21

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冷凍食品市場、コロナで拡大  専門スーパー、冷凍庫もの写真

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響による内食需要の拡大に伴い、家庭での調理の負担が増えたことにより、手軽で便利な冷凍食品に対する需要が高まっている。一部の冷凍食品メーカーは増産投資に踏み切り、小売り業界では冷凍食品専門スーパーが店舗展開を加速している。家庭では冷蔵庫の冷凍コーナーがいっぱいとなって収納力が限界に達していることから、冷蔵庫メーカーが「セカンド冷凍庫」を投入する動きも出ている。

 ニチレイグループのニチレイフーズは昨年11月、山形工場(山形県)と長崎工場(長崎県)で冷凍食品の生産能力の増強に乗り出した。両工場で合わせて約50億円を投資し、山形工場には個食生産ライン、長崎工場には今川焼を主体とした軽食・スナックラインを新たに導入する。(写真は長崎工場増強ラインのイメージ)

 2工場のうち山形工場の新ラインは、「主食」と「おかず(複数の具材)」をセットできる、容器の形状なども複数対応することができる2点を掛け合わせることで、あらゆる業態に向けさまざまなメニューを提供できるという。

売り上げ3倍を目指す


 同社は1人前規格の主食・主菜、片手で食べられる軽食メニューをパーソナルユース商品と位置づけ、コロナ禍の巣ごもり需要で拡大する冷凍食品の需要を取り込む。今後もテレワークが一定程度定着することや単独世帯、特に高齢者単独世帯の増加を背景に、あらゆる業態でパーソナルユース需要はさらに伸長すると見込む。

 ニチレイフーズは積極投資により、家庭用・業務用ともに商品を投入。「現在100億円強の売り上げを2024年に300億円規模に拡大する」方針だ。

 生産能力の強化と並び、1月には今年の春季新商品・リニューアル商品として、家庭用・業務用冷凍食品を中心に合計で48品を発表、攻勢をかける。

 家庭用では3月に、高まるパーソナルユース需要に応えた新商品「冷やし中華」を投入。レンジでチンしても冷たく仕上がるというもので、麺と具に分別されており、マイクロ波の影響を受けにくい氷の特性を利用した独自技術を採用。電子レンジ調理後にも適度に氷が残ることで、麺をゆでるだけではなく、冷やす手間も省き、冷たい状態で食べることができる。

 新型コロナウイルス感染症の拡大状況により影響を受けている業務用でも、外食業態向けに店舗での調理負荷軽減に貢献する自然解凍をはじめ、マルチオペレーションが可能な「彩り野菜かきあげ 50」などを投入する。

 日本冷凍食品協会によると、20年の冷凍食品の国内生産は前年比2.3%減の155万1213㌧と前年を下回った。業務用は同13%減と大幅に減少した一方、家庭用は11.4%の大幅増。新型コロナウイルス感染症の感染防止のために外食が減った結果、家庭での冷凍食品利用ニーズが急上昇しており、調査会社インテージのSCI(全国消費者パネル調査)では「21年度の家庭用冷凍食品市場は20年度を上回り、過去最高の6800億円の規模」と予想している。

 大手スーパーなど流通業界も冷凍食品売り場の拡大に乗り出しており、イオンは16年に冷凍食品専門スーパー「ピカール」を展開するイオンサヴールを設立し、仏ピカールSAS社と共同で日本でのピカール事業を本格的に始めた。現在東京都と神奈川県で、小型店「プティピカール」を含めて18店舗(21年4月)を展開している。


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(イオン日の出店のピカール売り場、2021年10月=東京都日の出町)


 ローソンは昨年11月末、冷凍食品メニューを拡大した。解凍せずに食べられる冷凍デザート、容器ごとレンジで温めて皿への取り分けが不要な米飯やラーメン、生地にブランを配合した健康志向の冷凍ベーカリー、切り分けが不要な刺し身や馬刺しなど計12品。解凍の手間なく冷凍庫から取り出してすぐに食べられる冷凍デザートは4月末の発売に続き、12月にかけて「4種のマカロン」「フォンダンショコラ2個入り」を追加発売した。

「セカンド冷凍庫」


 当然、どこの家庭も冷蔵庫の冷凍スペースは満杯だ。ハイアールジャパンセールス(大阪市)は2111月、家庭での冷凍スペース確保のニーズに対応、「セカンド冷凍庫」のエントリーモデルを発売した。省スペース設計ながら収納力と使いやすさにこだわった60㍑の前開き式冷凍庫で、「年間5000台を計画している」という。特に冷凍庫を置くスペースを確保しにくい、都心部などの限られた居住空間向けの需要を見込んでいる。

 買い物や調理など家事にかかる時間の増加を軽減するため、作り置きや下味冷凍の保存、冷凍食品や食材の買いだめなどをするケースも急増している。同社は「内食の機会増加に加え、冷凍食品自体の種類拡大や質の向上もあり、冷凍スペースの依存度は高まっている」として、家庭での冷凍スペース需要の一層の高まりを見込んでいる。

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年3月7日号掲載)

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