会話できるカフェが好き! Z世代の「コト消費」 陣内純英 西海みずき信用組合理事長
2022.02.21
私は、東京を離れ地方に移り住んでから、ずっと観光客気分が抜けない。せっかく地方に来たのだから、その土地のうまいものを食べ、地元のお店で買い物をしたいと思い、それを実践している。コンビニとか全国展開のファストフード店はほとんど利用しない。服も買う場合は地場の百貨店。ネットで買ったことはない。
これに対し、今年うちに入った職員は、買い物や食事は、コンビニや全国展開のファストフード店をよく使い、服は主にネットで買う。地場のお店にはほとんど行かないと、私と正反対だ。コンビニは、やがて無人化され、衣服も試着アプリやサブスクなど便利なネット販売ツールが増え、若者はますますそちらに流れるのだろう。
しかし、若者が皆そうかと言うと案外そうでもないようだ。最近知り合ったさえさん(短大1年生)がこう話してくれた。「私、最近地元のカフェ巡りしています。波佐見や有田も含め佐世保周辺のお店を訪ねていますが、どこも親切で、楽しい会話ができるすてきなお店ばかり。こんなお店が周りにたくさんあるなんて佐世保最高! 進路選択で少し迷ったけど、佐世保に残ってよかった!」(写真:有田のカフェの「きなこのアイス」=さえさん(@sa_3654g)提供)
そう言えば私の足が地場の店に向かうのは会話を楽しむためかもしれない。この魚はどう料理したらよいか? どのみかんが甘いか? そんな質問に誰もが親切に答えてくれる。有益なローカル情報も入手できる。
無人化で販売コストは下がるが、コミュニケーションを楽しむことはできなくなる。モノ消費かコト消費かの分かれ目だ。
さえさんが属するZ世代の傾向として、「デジタルネーティブ」なだけに、「アナログに接して新鮮味を感じる」「モノ消費よりコト消費」「人とつながることや感動を共有することを大切にする」といったことがいわれている。訪れたカフェの様子などを頻繁にインスタグラムに投稿している彼女は、典型的なZ世代なのだろう。
佐世保の港の景観は神戸や横浜に劣らずカフェが似合う。地元の磁器も魅力だ。彼女のインスタを見て、自分も同じ体験をしたいと、この地を訪れる人が増えるかもしれない。港を見下ろす空き家を購入しカフェを営む移住者も現れるかもしれない。
地域のことを気に入り地域の魅力を発信するZ世代は、インフルエンサーとして地方創生の大きな戦力になる。さえさんの今後の活動を応援したいし、第2、第3のさえさんが現れることを期待したい。
また、佐世保はもちろん、地方には、親切で世話好きな人が多く、「コト消費」向きだ。「Z世代に感動を与えるコト消費」をイメージした店作りや商店街、産地のあり方を考えてみてはどうだろう。
(Kyodo Weekly・政経週報 2022年2月7日号掲載)
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