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自然と調和した産業づくり  北海道・紋別、なるか「第二東京」  伊藤正人 北海民友新聞社長

2022.02.28

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自然と調和した産業づくり  北海道・紋別、なるか「第二東京」  伊藤正人 北海民友新聞社長の写真

 平成元年から現在までの33年あまり、最大震度が一番低い震度1を記録したマチは、北海道北東部の滝上町と西興部村のみだ。二つのマチは隣接し、オホーツク海沿岸のほぼ中央に位置する紋別市を中心とする地域=紋別郡に属する。一方、首都圏では、巨大地震などの災害襲来が懸念される中、安心安全な地域への企業移転・移住が何よりも優先すべき事項であろう。紋別エリアを現場からリポートする。

 オホーツク地域というと、日本の中の外国、異国情緒漂う極寒のイメージを持つであろう。

 オホーツク海とは280㌔の海岸線で接しており、総面積は岐阜県より少し大きい1万691平方㌔である。海域は、宗谷岬(稚内市)から根室半島の先端に位置する納沙布岬(根室市)までの間をオホーツク海という。

 これらを行政区画である「郡」というくくりでみてみると、全国375郡の中で、紋別郡(遠軽町・湧別町・滝上町・興部町・西興部村・雄武町)の人口は3万8812人と全国89位だが、面積は、埼玉県よりも大きい3913平方㌔で断トツで全国1位である(人口密度は348位で9.92人/平方㌔)。〈2021年10月1日現在〉

肌で感じる四季の移ろい


 紋別郡の中心都市である紋別市は、地震や台風による被害も少なく、とても恵まれた環境の中にある。平均気温は北海道内の気温に比べて若干低く、夏期でも月平均20度前後と冷涼で、5月から9月まではオホーツク海高気圧による低温を除いては比較的温和というのが特徴だ。(夏期にはフェーン現象がおこり猛暑に見舞われることがある)

 秋冬にかけては雨量も少なく晴天乾燥の日が多く続き、冬季は北西の季節風と流氷の影響を受け、氷点下20度を超える日もまれにあるが、平均すると氷点下10度前後の日が多い。四季の移ろいを肌で感じることができるマチである。

 さらに、自然環境においては、日本一の森林認証エリアを誇り、東京ドーム100個分の広さに相当するコムケという美しい湖を保持するなど、自然環境とも調和した産業づくりを目指している。

 紋別港は、自然の大きな恩恵を受け、早くから漁業の発展に貢献してきた重要港湾。水深12㍍岸壁を持ち、大型船の入港も可能なことから、今後期待されている北極海航路への中継基地にもなりうる立地だ。

 鉄路はないが、オホーツク紋別空港は羽田空港まで1時間45分で結ばれており、現在は札幌圏への複便化も目指している。

 北海道内での移動については、旭川紋別自動車道、道央自動車道により、車で旭川市まで2時間、札幌市まで3時間50分で到着でき、都市間バスも運行されている。

日本一安全で豊かな地域へ


 紋別市は、各地域間の競争も激化する中、2020年度の北海道内市町村のふるさと納税受け入れ額が133億円と、2年連続で首位をキープし、全国においても第2位という高成績を残している。

 オホーツク海の豊富な資源を生かし、ホタテやカニなどの水産物、畜産品や農作物などのブランド化や観光産業との連携が人気を押し上げている理由だ。

 豊かな森をつくることが、豊かな海をつくることは知られているが、最近の研究では、栄養物質(窒素やリン・鉄)と流氷を運ぶ、東サハリン海流がオホーツクの海を豊かにしていることが分かってきている。

 アムール川の近くで生まれた流氷は、東サハリン海流に乗って運ばれ、流氷アイスアルジー(微細藻類)が春になって解け始めると、その多くは塩分の少ない表層にとどまり、光合成をしながら海の中を漂う植物プランクトンとして増える。これを動物プランクトンが食べ、魚類などの生き物が食べるといった仕組みである。

 1月下旬から3月にかけてオホーツク海を覆う流氷は、ここオホーツクでしか見られない神秘的な光景である。流氷を砕く2本のドリルが有名となった「流氷観光船・ガリンコ号」に乗って、移住計画を立ててみてはいかがだろうか。(写真:オホーツクでしか見ることができない、流氷観光船・ガリンコ号=北海民友新聞提供)

 日本は、世界でも有数の地震大国であることはよく知られている。これまでも幾度となく被災し、尊い生命や貴重な財産を失ってきた。

 中でも今日、懸念されているのが南海トラフ巨大地震だ。内閣府はこれまで、地震多発や注目される南海トラフのさまざまな予測から、30年以内にマグニチュード8~9クラスの地震が70~80%の割合で発生することや大津波も予測し、避難者は1週間で最大950万人、死者の数は東日本大震災の約2万人に対し32万3000人といった大規模な数を予測している。

 この地域には、生きていく上で最も大切な安心と安全があり、美しい四季や自然がある。

 地域創生・活性化をはかっていくための原石や原動力は未開拓に近い田舎にこそ埋もれているに違いない。

 この地に「第二東京」を創ってみてはいかがだろうか。

 【筆者略歴】北海民友新聞代表取締役社長 伊藤正人(いとう・まさと)1970年生まれ。明治乳業(株)東京支社[現・(株)明治]入社、1995年(株)北海民友新聞社に転職。2006年専務取締役を経て、2015年より現職

(Kyodo Weekly・政経週報 2022年2月14日号掲載)

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