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小麦価格高騰の恐れ  ロシア、ウクライナで輸出の3割  NNAオーストラリア

2022.02.25

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小麦価格高騰の恐れ  ロシア、ウクライナで輸出の3割  NNAオーストラリアの写真

 ロシアの軍事侵攻によるウクライナ情勢の緊迫化が、世界の小麦輸出市場を揺るがしている。両国は小麦の輸出大国で、2021/22年度の輸出量は合計5850万㌧に上る。世界全体の29%を占める2カ国からの供給が軍事衝突により停止した場合、国際価格は高騰しサプライチェーンは大混乱に陥ると予想される。一方で世界市場におけるオーストラリア産の存在感は、相対的に高まるとみられる。

 ロシアは世界最大の小麦輸出国で、米農務省(USDA)はロシアの今年の輸出量を、世界全体の17%に相当する3500万㌧と予想した。一方のウクライナも有数の小麦生産国で、予想輸出量はオーストラリアと並ぶ2350万㌧だ。

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 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)はこれまでに、ウクライナを縦断するドニエプル川以東の領土にロシアが侵攻するという予想シナリオを発表した。農業情報企業メカルドによると、この地域はウクライナの全小麦生産量の約半分に当たる1200万㌧が生産される地域で影響は大きい。また軍事衝突時には黒海の港の閉鎖や運航の停止も想定され、ロシア産やカザフスタン産などを含めた小麦の国際市場への供給停止も予想されるという。

「プレミアムは豪に流れる」


 オーストラリアの穀物業界団体グレイン・グローワーズのホスキング代表は「事実上、世界の小麦大国同士の紛争で、プレミアムの一部は間違いなくオーストラリアに流れる」と予想。今シーズンの生産量が3440万㌧と過去最高を記録したオーストラリアは市場で存在感を強めるとみる。

 西オーストラリア州最大の穀物取扱業者CBHも「ロシアとウクライナの対立は穀物価格のボラティリティーを高める」と指摘。「市場は紛争地帯から距離を置こうとし、オーストラリアの好機となる」と指摘した。

 すでにオーストラリアへ調達先を切り替える動きも出た。米調査会社S&Pグローバル・プラッツは東南アジア諸国からオーストラリアへの打診が、ここ数週間で増加していると報告。特にエジプトに次ぐ世界第2位の小麦輸入国で、従来はウクライナ産のタンパク質11.5%の小麦に依存していたインドネシアの製粉所が、紛争発生の懸念からオーストアリア産に切り替えを検討しているという。

 インドネシアはオーストラリアにとって小麦の主要輸出国で、16年度には450万㌧を輸出していたが、干ばつもあり20年度には100万㌧まで急減、同期間にウクライナ産は160万㌧から300万㌧へ増加していた。

 プラッツは「オーストラリアは輸出市場で『安全な避難所』として見られている」と指摘している。

価格は2倍になる可能性も


 一方、価格面はロシアが親露派支配地域の独立を承認したことで西側諸国が経済制裁を発表したと同時に上昇した。現物価格よりも先物価格が反応し、オーストラリアの東部小麦先物は3月限で4豪㌦上昇の366豪㌦(1豪㌦=約82円)、23年1月限が9豪㌦上昇の375豪㌦、クイナナAPW1も5豪㌦上昇の360豪㌦を付けた。また、黒海周辺を除き米国や欧州の市場も上昇した。

 農業系銀行ラボバンクのアナリストは「黒海地域からの輸出が混乱した場合、小麦価格は現在の2倍になる可能性がある」と指摘。「2倍の価格が長期間維持されることはないが、現行水準から急速かつ大きく上昇する」と予想した。またメカルドのアナリストは、2014年の政変「クリミア危機」で小麦価格が20%上昇したと指摘し「現在の紛争による価格上昇は、14年当時を超える可能性がある」と述べた。

 オーストラリア農業省が発表した最新の輸出価格は、今月16日付のアデレード港の製粉小麦(APW)の輸出価格で1㌧当たり485豪㌦。昨年11月頃から前年比35%増の高値圏で推移しており、押し上げ要因にウクライナ情勢が加わった形となった。

 一方で、ロシア産小麦に関しては、潜在的な紛争リスクが重しとなっていた状況で、今年に入り国際価格とは逆に下落基調だった。米国や欧州のロシアに対する経済制裁は同国の小麦の輸出に打撃を与えるとみられ、その多くは高い穀物価格を嫌気しているアフリカや中東に出荷されるとみられる。

ロシア産、中国が支援か


 他方、市場では両紛争国からの輸出の減少分は、今年4480万㌧の生産が予想される米国産で賄えるとの見方もある。ただ、米国を含む主要輸出国の小麦の在庫は急減しており、米国では前年比で540万㌧、欧州連合(EU)で105万㌧、カナダでは255万㌧減少している。このため、紛争地域からの輸出が急激に落ち込めば、これらを補うには限界があるという声が大きい。このこともオーストラリアが世界市場の不安定さから恩恵を受けるという立場を強化することにつながる。

 20年に前年の2.5倍の小麦を輸入するなど、近年穀物輸入を急拡大させている中国は、行き場をなくしたロシア産を買い入れし、支援する姿勢だ。

(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 2月25日号掲載)

【ウェルス(Wealth)】 NNAオーストラリアが発行する週刊のオセアニア農業専門誌です。

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