日本の農業「こう変える」と訴え 農業経営大学校が卒業研究発表会
2022.02.15
農業経営者の育成を目的とした専門教育機関である日本農業経営大学校(東京都港区、堀口健治校長)は15日、本年度卒業予定(第8期生)14人による「卒業研究発表会」を開いた。
卒業後に取り組む予定の農業の具体的な計画を、採算性や地域貢献といったポイントを交えて15分ずつ発表。同校幹部・有識者ら5人の審査員が、発表者と質疑し、講評した。
2013年4月開校の同校の卒業研究発表会は8回目。14人は3月の卒業式を経て各地で就農する。これまでの卒業生計101人の進路は、実家の経営の継承、農業経営体の幹部、実家での新事業立ち上げなどさまざまだ。
一般社団法人アグリフューチャージャパン(AFJ)が運営する同校の学生は、ゼミに所属して食や農業にかかわるビジネスモデルの提案など、各自の関心に沿った調査研究に取り組む。在校2年のまとめとして、卒業後に農業を実践する上で必要となる経営計画を作成し、卒業研究結果として発表している。
この日の審査員は以下の5人。
▽公益財団法人流通経済研究所名誉会長(AFJ理事) 上原征彦氏(審査委員長)
▽有限会社ジェイ・ウィングファーム代表取締役(AFJ副理事長) 牧秀宣氏
▽JA総合営農研究会代表(AFJ審議委員) 黒澤賢治氏
▽株式会社クリエイティブ・ジャングル代表取締役(日本農業経営大学校講師) 竹林陽一氏
▽農林中央金庫営業企画部部長(AFJ会員) 高室琢氏
発表と審査員の講評の後、AFJの鈴木豊理事長は閉会のあいさつで「卒業生の皆さんは今日の発表をもって、農業経営者への道を歩み始めた。プロとしての矜持を持って第一歩を踏み出してほしい」と述べた。
14人の発表は以下の通り。記載は姓名、(就農予定地)、「発表タイトル」、計画骨子ーの順
▽塚本 真菜(静岡県島田市)「ミライに地域を繋ぐプロデューサーになる-雇用就農からの挑戦-」法人の農業部門に社員第1 号として雇用就農する。ミカンを中心に生産する就農先ではデータ活用や労務管理により、生産・販売の合理化を図る
▽榎本 龍太郎(愛知県西尾市)「日本の食を支える農業-現場発の経営合理化」コメ、小麦、大豆、キャベツの4品目を生産する親元に就農する。水の管理、除草処理など、生産効率を下げている分野から手を付けて経営効率を上げる。水田ではじかまき栽培を始める
▽桒原 宗之進(熊本県錦町)「食と暮らしを豊かにー自然栽培だからできることー」コメの有機栽培(自然栽培)をする親元に就農。混ぜて炊ける新品種を導入し、販路も拡大する。自然栽培の体験農園と、加工品としてみそ作りを始めたい
▽木村 元康(山形県鶴岡市)「木村くろうえもん農場の新戦略」水稲(つや姫)と枝豆(ただちゃ豆)を栽培する親元に就農。23代続く自家ブランドを発信し、直販などの拡大も図る。ただちゃ豆の加工品開発や、積雪期に生産できる作物を導入も検討する
▽大島 邦英人(岐阜県高山市)「農人文業のインキュベーション」雇用就農した後、独立就農を計画している。トマト、メロン、カブを戦略的に生産し、地域顧客への飛騨メロン販売からブランド化を図り、農業体験を開催。観光客への体験農園に育てる
▽関谷 彰修(東京都足立区)「~令和の八百屋の生き方~」さいたま市で雇用就農しながら、足立区の商店街で八百屋を開業した。近隣農家から仕入れ、収穫日を明示。シイタケは店内の原木から販売。仕入れ、物流の効率化などから経費を減らす
▽桑原 逸輝(熊本県上天草市)「彩りで人々に笑顔を~カラフルトマトの観光農園~」雇用就農後に独立新規就農する。ミニトマトの観光農園から地域活性化を目指す。就農3年目に観光農園を、直売も開始。5年目にはは栽培面積60㌃に広げる
▽浦 智弥(福岡県糸島市)「選択と集中で挑む養豚経営」親元に就農する。繁殖の一部を外部化して一貫経営から転換。加工・販売面を強化、10年後に売上高1億円を目指す。販売から得た情報をフィードバックし、肥育改革に反映させる
▽長野 泰藏(熊本県南阿蘇村)「竹で守る阿蘇とあか牛の未来」繁殖母牛を飼育する実家に就農する。輸入飼料依存を脱するため、竹の飼料化を進め、地域の放置竹林問題の解決も図る。あか牛一貫経営を通じ産地を復活させる
▽野川 龍弥(栃木県那須塩原市)「第三者継承のロールモデルへ」ナス、ネギなどを生産する農業法人を第三者継承し、就農する。露地栽培を守りながら、現在の水稲生産は減らし、園芸作物の種類、生産増を図る
▽加茂 倫也(京都府美山町)「条件不利からの逆転ビジネスモデル~中山間だからできること ~」中山間地域でコメを作る農業法人に就農する。生薬用など需要増が期待でき、中山間地域に合ったサンショウ生産の研究を開始。コメと複合経営化したい。世界のスパイス市場も見据えている
▽三上 敦也(東京都東村山市)「都市農業で目指す豊かなコミュニティの形成」9代続く「久米川三上農園」に親元就農し、野菜の減農薬栽培を進める。直売所事業を立ち上げ、近隣世帯に販売する。体験・貸農園事業で都市農業の存続を図りたい
▽東宮 礼佳(埼玉県嵐山町)「Health Care Farmの新設-『農』で働く人を元気に-」看護師・保健師などの資格を生かし、健康増進を図る体験型農園を開設する。福利厚生サービス事業者などと連携し、野菜の特別・有機栽培体験を通じ健康相談や健康チェックをするプログラムを運営する
▽羽田野 拓也(北海道斜里町)「『日本の食卓』と『斜里の未来』を切り拓く~新たな地域輪作農業モデルの提案~」耕地面積65㌶で小麦やジャガイモを生産する親元に就農。所有者が異なる農地を集約し、アグリテックを活用し地域一体型の輪作を進める企業を設立する
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