育て!定番商品 自治体アンテナショップの戦略 畠田千鶴 地域活性化センター
2021.12.06
お土産の定番の広島のもみじまんじゅう、新潟の笹団子、沖縄のちんすこうなどが、東京にいながら、いつでも手に入る。自治体アンテナショップの魅力の一つだ。加えて、地元ではおなじみの商品でも、全国的には知られていない珍しい商品も数多く扱っている。都内アンテナショップの約40%が1000品目以上を取り扱っており、これらの商品の販路拡大や消費者ニーズの把握などに戦略的に取り組んでいる。
「北海道どさんこプラザ有楽町店」は、2017年度から3年連続で年間10億円以上を売り上げた人気店だ。限定販売のチーズケーキやソフトクリームを求めて顧客が列をなすこともある。
同店では、地元商品を育成するために、売り場の一部に「ルーキーズステージ」を設け、道内商品のテストマーケティングを実施している。新商品を一定期間販売し、売れ行き情報を収集、フィードバックする。売り上げが好調で高評価の商品は、定番商品として売り場に並ぶこともある。
「まるごと高知」を運営する一般財団法人高知県地産外商公社は、同店舗が開店する前年の2009年に県が設立した。単に特産品の販売や飲食の提供を行うだけではなく、アンテナショップを拠点として、商品の磨き上げや情報発信、県産品の売り込み、テストマーケティングにも対応できる組織である。(写真:銀座にある「まるごと高知」=10月20日、筆者撮影)
「県産品が小売店や飲食店で取り扱われる」ことを目標としている。高知県内には大企業がなく、首都圏や全国にむけて営業が困難な中小・零細企業を支援する。アンテナショップはショールームとしても利用され、小売店、飲食店、バイヤーは、現地に行かなくても実物を確認でき、説明を受けられる。その結果、外商成約金額は2011年3億4000万円から20年47億円と飛躍的に伸びた。
まるごと高知の店内には、県内で製造されている各メーカーの芋けんぴ、柚子ポン酢、東京で人気の「おかずしょうが」などの商品が所狭しと並べられている。その中の一つ、「ミレービスケット」は、大正時代に創業した老舗「野村煎豆加工店」が1955年ごろから製造を始め、高知では誰もが知るスナック菓子だ。
最近では、都内のスーパーでもよく見かける。事業者の営業努力、公社やアンテナショップの支援が実を結んでいる。また、事業者はミレービスケットの増産のために工場を新設し、地元に雇用の場を生み出した。
「特産品、あるある」で、地域のレア商品がメディアや有名人に紹介され、一時的ブームで売り上げを伸ばすが持続しない例がある。願わくは、このようなチャンスを捉え、商品や地域の魅力を発信し、ファンを増やし、新たな定番商品を育ててほしいと思う。
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年11月22日号掲載)
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