「ミルク入りティーバッグ」「飲むカレー」 ユニーク飲料品、続々登場
2021.12.13
飲む缶カレー、ミルク入りティーバッグ、缶入りワイン、パン入りスープ―。飲料品市場で、常識を覆すユニークな商品が相次いで登場している。これまでも一時、ブームとなった「食べるラー油」などのように、従来の枠にとらわれない商品もあった。最近は開発までに3年を要した商品もあるものの、新型コロナウイルス禍の中、巣ごもり生活で伸びる「家飲み需要」や「時短」「手間なし」などのニーズを背景に商品化されるケースが目立つ。
3年かけた労作
三井農林は8月、「日東紅茶 ミルクとけだすティーバッグ」シリーズ(写真左)を発売した。茶葉とクリーミングパウダーが一つのティーバッグに入っており、お湯を注ぐだけで手軽にミルクティーが楽しめる。商品化は容易に思えるが、このシリーズ、約3年をかけて開発された労作だ。
同社はティーバッグ資材の設計について「『溶解しやすく抽出されやすい』と『粉漏れしにくい』という相反する特徴の両立に苦労した」という。
この課題解決のため、「さまざまな素材のティーバッグの探索や調整を行い、最適な組み合わせ」を見いだした。また、簡便性と香味を両立できる茶葉とクリーミングパウダーの選定・組み合わせにも注力し、「熱湯を注いで90秒で茶葉本来の香り高い味わいのミルクティーを楽しめるようにするために、多くの組み合わせの中から配合を決定した」という。
「まだ店頭に並び始めたところで、売れ行きが分かってくるのはこれからだが、予想以上の反響」で、「牛乳がなくてもお湯だけですぐに作れる」「砂糖不使用で甘くないものを待っていた」など、好評を得ているという。
さらに「『ティーバッグ一つでミルクティーが出来上がる』という商品の正体と新規性が瞬間的に分かり、また単純にミルクが『入っている』ではなく、『とけだす』でおいしさも表し、興味を引くことを狙った」ネーミングも奏功した。
外出先のランチで
「飲む缶カレー」新登場!。ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)は8月、国民的人気メニューであるカレーを缶入りにした「カレーな気分中辛」(写真右)を発売した。おにぎりやパンとの相性抜群の食事系スープで、「カレーを少しだけ食べたい」時に、そのままスープとして即飲できるだけでなく、おにぎりやパンといった食事にも合うので、外出先のランチなどでも食事の一品として楽しめるという。
同社は「10月に入り、気温が低下し始め、徐々に自動販売機や店頭でも売り場が広がってきた。『スパイスがきいていておいしい』など味覚に対する好意的な評価も多く頂いている」という。
「飲む缶カレーとして十分に満足できる味わい(とろみ・うま味・コク)、かつ1本飲み切れるくらいの辛さのバランスをとる味づくりを何度も繰り返したので、喜んでいただけて大変うれしい」としている。
ビジネスパーソンのランチシーンでは、ホットドリンクと一緒に購入する食品に、おにぎりやパンが上位にきており、これらと相性のよい食事系スープをドリンクとして提案することで、手軽にどこでも満足感の高いランチや食事ができると考えた、と商品化の背景を説明する。
香味野菜とビーフとポークのうま味が広がり、カレー好きも満足できる中辛のカレースープで、10種類のスパイスが溶け込んだスープには、グループ会社であるスパイスメーカー、ヤスマのスパイスも使用している。
「ついに飲み物に」
「食べるラー油」をほうふつとさせるネーミングだが、「テレビやネットニュースなどにも取り上げられ、SNSなどのコメントでは、『ついに飲み物に』などの商品化に対しての驚きのコメントも多数いただいている」と話題作りの狙いも的中している。
「缶スープのトップメーカーとしてカレーに限らず、今後もメニューやカテゴリーを超えていく商品を生み出し、『ドリンクスタイルの手軽にとれる食事』を提供したい」と意気込む。
缶ビールならぬ「缶入りワイン」。サントリーワインインターナショナルは今秋、一部のECチャネルを対象に缶入りワイン「ONE WINE(ワン ワイン)」を数量限定で発売した。
近年、欧米を中心に若年層を中心に缶ワインの市場が伸長しているほか、巣ごもりで家のみ需要が増えていることから、国内でも飲みきりサイズの250㍉㍑缶容器の缶ワインを発売した。これまで「ワインサワー缶」を発売しているが、ワインの持つ価値を、飲みきりサイズの缶容器で気軽に楽しめる新ブランドを投入した。
素材のおいしさが溶け込んだ濃厚ポタージュにチェダーチーズを練り込んだサクサクパンが入った容器入りスープを発売したのは味の素。時短ニーズに応えるほか、「パスタ入りだけでなくパン入りもあったら気分に合わせて選べてうれしい」「朝食にはパスタよりパン入りがいい」などの消費者の要望に応える商品だ。
ポタージュスープにサクサクのパンが入って食べごたえがあり、それだけで軽い食事になる容器入りのスープパン入り3品種が「クノール スープDELI」に加わった。
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年11月29日号掲載)
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