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食材判別から盛り付けまで  調理ロボ、進化で人件費削減効果

2021.11.08

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食材判別から盛り付けまで  調理ロボ、進化で人件費削減効果の写真

 最大287万通りのカスタムサラダ、1台でビール・ウイスキーなどのドリンクメニュー、投入からゆで、洗い、締めまでの生そばづくりー。
 複雑で多様な調理作業を人間に代わってこなす調理ロボットがスタートアップ企業を中心に、センシング技術や人工知能(AI)技術などを駆使して開発が進んでいる。人手不足や人材育成など事業継続に必要な課題を抱えている飲食業界の導入意欲は根強く、調理ロボットが課題解決の切り札となるか注目される。

 調理作業は使用する調理器具や食材の種類が多く、取り扱いも複雑なことから、これまで国内ではロボット化が進まなかった。

 しかし海外で実用化が進む中、最近、スタートアップ企業などの取り組みにより、製品化が進んでいる。コロナ禍で非接触のニーズの高まりもあり、調理ロボットの重要性が広がっている。

メーカーやレストランと開発


 調理用ロボットや食品工場向け業務ロボットの開発を行っているテックマジック(東京都)は9月、日清食品と料理の盛り付け作業や栄養バランス調整を自動で担う調理ロボットの開発・実装を目指し、共同開発契約を結んだ。初期段階では、「チンジャオロース」など不定形の食材を具材から判別し、正確に必要量を盛り付ける技術開発に注力する。

 10月には、好みの野菜とトッピングを自由に組み合わせてつくるカスタムサラダレストラン「クリスプ・サラダワークス」を運営するクリスプ(東京都)と、最大287万通りのカスタムサラダを自動で供給するサラダ調理ロボットの開発に着手した。

 ロメインレタスやチキン、野菜といった27種類のトッピングを自動で計量し、ロボットアームがサラダボウルを運び、具材を受け取り、 ベルトコンベア上を流れるサラダボウルをスタッフが受け取るまでの一連の動作を自動化する。2022年7月末にもクリスプ・サラダワークスに導入し、1時間に60食の提供を目標にしている。

 現在、ある飲食店向けに開発を進めているドリンクロボットは「ロボットアームが各ディスペンサーから必要材料を自動で抽出し、組み合わせることで、複数のドリンクメニューを1台のロボットで作成」(テックマジック)できる。「グラスを傾けながらロボットアームを動かすことで液体をこぼさず高速移動が可能になり、30秒で1杯の作成を実現」するという。

 しかも、「グラスを使用し、注ぐ直前で急速冷却を行うため、触感のクオリティーが高い本格的なドリンクを作成できる」と胸を張る。

 プロントコーポレーション(東京都)とは、パスタを自動調理するロボットの共同開発に取り組んでおり、「年内導入予定」だという。

 テックマジックは、持続可能な食インフラをつくるため、外食産業の生産性向上と人手不足や人材育成問題などの解決を目指している。従来、調理作業の一部だけを自動化するロボットの場合、省力化はできても働く人の数を減らすことまでは難しかった。

 開発中のロボットはほとんどの作業の自動化を実現することで、作業に係る人数を1人単位で減らし、人件費の削減を可能にする。

 一方、飲食ロボットの研究・開発を手がけるコネクテッドロボティクス(東京都)は駅そばロボット、たこ焼きロボット、ソフトクリームロボットなどの商品化に注力している。

 今夏には関越自動車道の三芳パーキングエリア上り線の商業施設「パサール三芳」で、非接触型ソフトクリームロボットの実証実験を実施。「実用化に向けてロボットやコーンディスペンサーの改良を進めている。3密を避けるためにも非接触はニーズが高いので今後の展開を検討中」だとしている。また、「たこ焼きロボットは9月で実証実験が終了」した。

駅そばロボ30店に


 こうした同社の調理ロボット開発の中で注目されるのが駅そばロボットだ。

 JR東日本スタートアップとJR東日本フーズ(JRフーズ)などと協力し、昨年、「そばいちnonowa東小金井店」(東京都)で単腕型調理ロボットの実証実験を行った。

 ここでの知見を基に改良を重ね、ロボットアーム2本を活用した双腕型調理ロボットを今年3月、千葉市の「そばいちペリエ海浜幕張店」に導入(写真)。店舗全体の従業員約1人分以上の作業量を代替する。「JRクロスフーズカンパニーにロボットシステムを提供させていただいており、同社は今後、30店舗の導入を目指している」という。

 駅そばロボットはロボットアーム2本を活用しており、人と協働できる調理ロボットの実店舗導入は日本初という。1本目のロボットアームが生そばを「番重」から取り出し、ゆでザルへ投入し、その後、2本目のロボットアームによりゆでる、洗う、締めるという一連の調理工程を行う。そば生産量は1時間に150食だ。

 「現場で使いやすいロボットを目指し、改善を進めている」とし、「そばをゆでるところのロボットだけでなくロボットのオペレーションに合わせてそば工場で番重にそばを詰めるところも省人化できないか検討中」だという。

(KyodoWeekly・政経週報 2021年10月25日号掲載)

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