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名古屋の水辺にぎわい再び  中川運河再生計画  松田寛志 日本プロジェクト産業協議会国土・未来研究会会員

2021.11.01

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名古屋の水辺にぎわい再び  中川運河再生計画  松田寛志 日本プロジェクト産業協議会国土・未来研究会会員の写真

 名古屋駅に隣接する中川運河。建設当時「東洋一の大運河」と呼ばれ、かつては名古屋の経済・産業の成長を支えてきたが、今日ではこの広大な水辺空間が生かされていない現状がある。リニア中央新幹線の開業で大都市圏の玄関口となる名古屋駅に連なる中川運河に、ニューノーマルな時代における「水と緑が融合した新しいライフスタイル」を担う水辺再生計画を提言する。

 日本の大都市圏の多くは沖積平野の河口デルタ地帯に発達してきており、産業を支える水運ネットワーク網とともに周辺土地利用も形成されてきたが、物流変化によって水運は衰退し、運河の役割を終えてきた。

 一方、欧州では運河を水運や水辺環境だけではなく、重要な文化財、観光資源として地域の中心に捉え、非日常的で多様となる価値観を取り入れた新たな都市空間が構築され、大きなにぎわいを生み出してきている。

 中川運河では、名古屋の都市中心部から名古屋港へと連なる広大な運河に対して、運河再生を望む市民の声も高まり、名古屋市および名古屋港管理組合が中心に中川運河の歴史を尊重しつつ、新たに求められる価値や果たすべき役割を見据えた「中川運河再生計画」を策定した。

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 この再生計画は、「歴史をつなぎ、未来を創る運河~名古屋を支えた水辺に新たな息吹を~」をコンセプトに、中川運河の都心側から「にぎわいゾーン」「モノづくり産業ゾーン」「レクリエーションゾーン」の三つのゾーンで再編する再生イメージが示されている。

 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)の「国土未来プロジェクト」では、この「中川運河再生計画」を基本にしつつ、事業のさらなる促進に向けて、アフターコロナにおけるニューノーマル時代での社会・価値観の変容を見据えつつ、新たなライフスタイルによる「人」中心のまちづくりの提案を行う。

国際都市の顔


 名古屋駅は、リニア中央新幹線によって形成される「スーパー・メガリージョン」における東西の要衝地となり、国際都市の顔となるべく大きな期待が高まっている。
 この名古屋駅に隣接し名古屋港を結ぶ中川運河では、国際都市としてふさわしい、観光・文化の発信地とし、潤い豊かで安らぎを与え、魅力ある都市空間の広がりを目指した街づくりはかかせない。

 JAPICでは、国内外における運河の再開発・再生事例などを参考に、中川運河沿岸の港湾倉庫地区に対し、中心市街地への近接性、中川運河へのアクセス、デザイン・コードの厳格化など、さまざまな開発視点から中川運河再生構想のビジョン・イメージを発信し、事業推進の起爆剤となることを目指した整備案を作成した。

 特に重要とした視点としては次の通りだ。
 ▼人口減少・高齢社会、過密社会、気候変動といったさまざまな社会課題からの持続可能な開発目標(SDGs)やテレワークなどの新たなニーズ
 ▼巨大拠点の名古屋駅と、魅力の高い湾岸エリアを結ぶ立地の特性
 ▼新トレンド・新ライフスタイルを反映した再生構想の提案
 ▼名古屋駅~名古屋港の新基軸を形成することを構想の起点に「グリーンリカバリー・ポストコロナ時代に次世代につながる新たな価値創造の発信」として将来の再生構想を提案

 【中川運河再生構想(案)】
 ①水と緑の回廊空間 アクアグリーンベルト~(緑豊かな水辺環境を楽しむ質感ある沿岸形成)
 ②新旧が融合する職住遊環境 ~ライフスタイルリノベーション~(運河沿岸施設のリノベーションから文化・芸術と新しい生活スタイルが融合した沿岸形成)
 ③地理的特性を生かした交通環境 キャナルモビリティーネットワーク(水上交通・鉄道を基軸とした環境に優しく利便性に富んだ拠点を結ぶモビリティーネットワーク)

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多様な世代が集う


 再生計画推進に向け、関係機関や地域住民による積極的な活動が行われてきているが、まだ再生に向けた地域計画推進への大きな声に至っていないのが現状である。

 さらに、民間企業による活動事業も多少な動きはあるものの活性化してきておらず、官民連携による事業推進に向けて、協議会の設立やさまざまな媒体を活用した広報活動による参入機運の醸成、3次元的な空間付加価値や次世代へ継承できる公共用途に対する新たな優遇制度の導入などによる事業促進を提案する。

 最後に、名古屋駅周辺のポテンシャルを生かすためにも、このニューノーマルな時代に向け、ワークプレイス時代の職住環境、多様な世代が集う沿岸整備、新しいキャナルタウン形成を発信していきたい。


〈世界運河会議における提言〉
 2021年5月21日~23日にかけ、世界運河会議NAGOYA2020が開催された。中川運河の再生を柱に、世界のさまざまな運河や都市整備デザイナーが集い大きな反響を呼んだ。JAPICは、オープニングディスカッションとしてシンポジウムを開催し、世界運河会議の最終提言に私たちが発信した提言が反映された。

 松田 寛志(まつだ・ひろし) 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)国土・未来研究会会員、日本工営常務執行役員

(Kyodo Weekly・政経週報 2021年10月18日号掲載)

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