女性たちが「もう一仕事」 信州のガーデンカフェに集う 田中夏子 長野県高齢者生協理事長
2021.10.11
東京の神保町で、小規模ながら気骨ある本づくりや文化事業を営んできた友人、羽田ゆみ子さん(写真)が、この2月、緊急入院と手術を経て、心身になじむ環境を求め、故郷の信州に転居してきました。
私の家からは、小さな峠を越えれば車で15分ぐらいの場所なので、「畑仕事のお手伝い」を口実に、よく寄らせてもらっています。羽田さんは目下、出版の仕事を続けながら、「ガーデンカフェ 梨の木舎」の開設も準備中。行くたびに、看板ができたり、駐車場ができたり、庭園が整備されたり...「細腕」なのに、涼しい顔して、力仕事もスイスイこなします。
約40年の本づくりで培った濃厚なネットワークがあるのでしょう、今や彼女のもとにいろいろな人が集い、生き方を交わし合う、不思議な磁場となっています。その一方で、ご近所や地元の皆さんの信頼も厚く、普通なら、長く故郷を離れていた者にはなかなか貸さないであろう田畑を、気持ちよく提供してくださるといいます。
そんな羽田さんを囲んで、もともと食や農に関心があった地元の女性たちが、この夏から集い始めました。私も仲間に入れてもらっています。種苗法や種子法、農薬や食品表示など、ハードな課題についての勉強会も企画しつつ、せっかく提供してくださる田畑を生かして、何かやりたい!と話し始めると、皆で見た映画の影響もあって、「山も大事」「堆肥、土づくりも!」と、アイデアがどんどん広がります。
しかし正直、私は最初ややおよび腰でした。7年前、お世話になっている農家さんから無理をお願いしてお借りした山際の畑4㌃を、わずか3年でお返しするに至った挫折経験があるからです。土に恵まれ、麦や大豆などよく育ち、しかも高台からの絶景が大好きな畑でしたが、鹿害がひどく、三重の防護柵も軽々突破される始末でした。
それでも、近年の食や農・生態系、森をめぐる危機的な状況と、そして何より羽田さんのカフェが持つ不思議な磁場に立つと、ひるむ気持ちに替わって、よしもう一仕事!と思い始めています。
(KyodoWeekly・政経週報 2021年9月27日号掲載)
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