総選挙にらみ手堅い人選 新農相に金子原二郎参院議員
2021.10.04
岸田文雄内閣の農林水産相に、金子原二郎参院議員が就任した。金子氏(77)の父・岩三氏(故人)は、第1次中曽根康弘内閣で農相を務めており、中川一郎・昭一氏(いずれも故人)以来の親子2代の農相就任となる。(写真上下:金子氏の公式ホームページ、Facebookより)
金子原二郎(かねこ・げんじろう)氏は宏池会(岸田派)所属で、初入閣。衆院議員(5期)、長崎県知事(3期)を経て、参院議員2期目で予算委員長を務めたベテランだ。政治家としての経験や人脈が豊富で、失言や強引な政策決定などの恐れが少なく、岸田政権にとって「安全」な政策運営を期待でき、総選挙に向けて農村に安心感を与える手堅い人事と言える。
日本遠洋旋網漁協組合長を務めるなど水産業界との関係が深いだけでなく、潮受け堤防の開門をめぐって混迷する国営諫早湾干拓事業を通じて、農業政策の複雑さも熟知している。
岸田首相は自民党総裁選を通じ、農業政策について「水田フル活用予算は恒久的に十分確保する。規制改革が現場にとって本当に良かったのか検証する」と述べており、目先の課題を着実に対応していく姿勢を示している。
一方、野党・立憲民主党はアベノミクスを「失敗」と断じ、枝野幸男代表は農業政策の柱に「戸別所得補償制度の復活」を掲げ、改革路線を明確に否定している。総選挙と参院議員選挙を控えている岸田政権としては、農村に「ラブコール」を送る上で、当面は改革路線が争点となるのを避けたいところだ。
(長崎県内で演説する金子氏と岸田文雄氏=当時外相、2016年6月)
次の焦点は、自民党側の態勢だ。高市早苗政務調査会長はアベノミクスの正統な後継者を自認し、「改革」の旗印を降ろさない。農業政策の面で政府と党の調整で重要な役割を果たすのは、農相、自民党農林部会長、衆院農林水産委員会委員長などの要職の経験者で構成する「インナー」と呼ばれる非公式の幹部会だ。
そのメンバー間の力関係が激変する可能性がある。最近まで10人近くで構成していたが、吉川貴盛元農相の議員辞職など実力者が相次いで脱落し、現在は森山裕元農相の「1強」態勢だ。
岸田政権下では、森山元農相の後ろ盾となっていた二階俊博前幹事長の影響力は低下しそうだ。「インナー」の主導権を誰が握るのか、若返りが進むのかによって、改革路線が再び台頭してくるのかや、本物の「安全・安心農政」になるのかの方向性が見えてくるだろう。(共同通信アグリラボ所長 石井勇人)
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