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農業の労働力確保で議論  農中総研がフォーラム

2021.09.15

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 農林中金総合研究所(農中総研)は15日、オンラインフォーラム「農業分野における労働力確保の課題とJAの取り組み」(協力:共同通信アグリラボ)を開き、農業従事者や研究者のほか、政府・自治体関係者、ジャーナリストらが参加した。

 フォーラムでは3人の研究者が講演。花木正夫・全国農業協同組合連合会(JA全農)耕種総合対策部労働支援室専任室長と、江川章・中央大学経済学部准教授がコメントした。講演者に江川准教授や参加者も加わり、質疑応答も行った。

 農中総研の石田一喜主事研究員は「農業分野における労働力確保の課題と特定地域づくり事業協同組合の活用」と題して、人手不足の現状と、2020年6月に施行された「特定地域づくり事業推進法」に基づいた人材派遣について説明、「全国で17団体が発足している。農村でのマルチワークや『しごと』を組み合わせて雇用機会を創出するという発想が広まる契機にすべきだ」と述べた。

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(石田一喜氏)


 長谷祐研究員は「新規就農者育成へのJAの取り組み」と題して、農業分野への新規参入の状況を説明、JA山形市セルリー団地、長野県の南信州地域(JAみなみ信州)、北海道むかわ町(JAむかわ)の3例を報告した。「新規就農者育成では募集・研修・就農・定着の4段階を通じ、地域と行政、JAの連携が決定的に重要だ。連携態勢は地域ごとに変わってくるが、地域農業を維持と特定品目の生産振興という2つの方向性を持った支援になる」と述べた。

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(長谷祐氏)

 農林水産省から草野拓司農林水産政策研究所主任研究官が参加し、「援農ボランティアへのJAの取り組み」と題して、労働力不足を補うために市民が参加することの意義と課題を説明。多品目の野菜を生産している都市型農業のJA東京むさし三鷹支店、柑橘類を主力とするJAなんすん(静岡県東部)の2例を紹介した。「援農ボランティアは労働力不足解決のひとつの手掛かりになるが、参加・受け入れを継続しやすくすることが重要で、人間関係の構築を意識することと、作業に応じた報酬とすることがポイントなる」と指摘した。

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(草野拓司氏)


 全農の花木室長は、「まず(農村の外から)来てもらう、労働日数や時間を労働者が決められるようにすることが重要だ」と指摘、JAが関与する「請負型」による外部人材のメリットを説明した。

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(花木正夫氏)


 最後に、皆川芳嗣・農中総研理事長が「テーマは労働力の確保が焦点だったが、広く農村地域政策、農福連携、農泊といったテーマにつながる気付きが多い議論ができた」と総括した。

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(皆川芳嗣氏)




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