流域一体の総合対策作りを 豪雨災害でJAPIC提言
2021.09.16
日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は16日、豪雨災害対策をまとめた「豪雨災害に関する緊急提言~治水対策のパラダイムシフトに向けて」を発表した。(写真はイメージ)
提言は、気候変動により水害が広域化、長期化、深刻化していることを受け、気象・水害のリスクを科学的に解明して広く情報発信しながら、「自助・共助・公助による総力戦」の態勢を取り、「重層かつ大胆な」施策を展開する必要があると指摘した。
個人や地域、行政などによる協力態勢の構築に関しては、防災のための公的施設整備に民間活動や民間資金が投入される環境を整備することや、公的な水の貯留施設と民間の貯留施設の双方が機能する仕組みの構築を提案。
災害後の復旧については、河川を横断する鉄道橋の早期の運行(利用)再開を妨げている制度の変更を求めたほか、「公共災害復旧事業」と「復興事業」を一体的に実施するための制度創設を提案した。
流域全体を対象に水害対策を進める点では、自治体の枠を超えた「流域・地域防災計画」の作成を制度設計することや、流域内でのリスク分担に基づく「流域安全確保基金」の設置、脱炭素税と同様の仕組みで地域の対応策を支援する制度の創設を求めた。
貯水の具体策では、過去に計画の中止や休止、優先順位を落としたダムや遊水地、放水路の再評価・再検討を行うべきだと指摘し、耕作放棄地に関しては、貯留効果を確保すための仕組みづくりを求めた。
安全な街づくり策としては、高規格堤防の整備促進、1階の一部もしくは全部を吹きさらしにする高床式の「ピロティ建築物」の整備や、大規模広域盛土による街の高台化促進を提言した。
情報共有や社会意識を高めて防災につなげる策として、ハザード・リスク情報の公開促進や、ハザードマップの精緻化・完全化の推進を求め、水害保険への政府支援強化や、孤立集落回避のための避難路(命の道)整備も提案している。
JAPICは同日、緊急提言についてのシンポジウムを開催。JAPICの豪雨災害に関する緊急提言ワーキング長代理の越智繁雄・大成建設執行役員が提言について説明したほか、同ワークング委員で東大生産技術研究所教授・社会科学研究所特任教授の加藤孝明氏と、井上智夫国土交通省水管理・国土保全局長が講演し、パネルディスカッションも行った。
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