伸びる「アーモンドミルク」市場 認知度上げ需要拡大図る
2021.08.16
牛乳、豆乳に次ぐ「第3のミルク」ともいわれる植物性ミルクの中でも最近、アーモンドを材料にしたアーモンドミルクが注目されている。ビタミンEと食物繊維・カルシウムが取れ、美容や健康によいとされることから、シニア層を中心に市場が急成長している。ただ、国内市場に上陸して約8年になるものの、認知度が依然、低いことが課題のようだ。
米国市場に続け
業界を挙げて新製品の投入や、製品のリニューアルに取り組み、市場の拡大を目指すアーモンドは抗酸化作用があるビタミンEや食物繊維が豊富で、健康・美容意識の高い女性などから注目されている。
アーモンドを原料にしたアーモンドミルクは欧米などで健康意識の高まりや菜食ブーム、乳飲料の代替飲料として生活に定着し、大きな市場を形成している。主要消費国である米国市場は2000億円といわれる。
アーモンドミルクの国内市場で、「シェアは約90%」と、トップを占めるのは江崎グリコ。2014年3月に「アーモンド効果」を発売、「そのまま日本に導入するのではなく、アーモンドのパイオニアとしての技術を結集し、健康要素も含めつつ日本人に合うおいしさ、なめらかさを実現」したことで多くの支持を得たという。
ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市)は17年12月に米ブルーダイヤモンド・グロワーズとアーモンド飲料の国内製造・販売でライセンス契約を結び、18年3月からブルーダイヤモンドの世界的ブランド「アーモンドブリーズ」の販売を開始した。豆乳飲料の事業展開領域にアーモンドミルクを加えることで、「植物性ミルク」カテゴリーでの飛躍的拡大を目指している。
研究会設立しラインアップ強化
アーモンドミルクが国内市場に「上陸」したのは13年9月。豆乳メーカーのマルサンアイがブルーダイヤモンド・グロワーズとアーモンド飲料でライセンス契約を結び、日本初上陸のアーモンドミルクとして「アーモンドブリーズ」を発売し、先鞭をつけた。
その後、ブルーダイヤモンド社との契約終了後、長年、培った豆乳製造のノウハウを生かし、18年10月に自社商品として「毎日おいしいアーモンドミルク」を発売した。
しかし、国内市場は拡大し始めたものの依然、認知度が低いようで伸びはもう一つだった。
そこで、江崎グリコなど各社がアーモンドミルクの認知度向上に向け、「アーモンドミルク研究会」を設立。各社も製品のリニューアルやラインアップの強化などにより、消費者の飲用シーンの拡大などに取り組み、市場の拡大を図っている。江崎グリコは今年3月、ビタミンDを1本(200㍉㍑)で1日の不足分を摂取することができる「ほろ苦キャラメル味」を売り出した。
「アーモンド効果」のラインアップを「オリジナル」、「砂糖不使用」、「3種のナッツ」などと合わせ、拡充した。「オリジナル」はアーモンドペーストの中に凍結粉砕アーモンドを25%、その他は10%使用している。
ポッカサッポロフード&ビバレッジもラインアップを強化している。昨年3月にはカルシウム量を強化し、バリューアップした。「パッケージ、中身スペック、価格体系をフルリニューアルした点が奏功」した結果、「昨年の売上金額は前年比約1.6倍。中でも砂糖不使用のホームユースタイプ(1㍑サイズ)が好調で、今年1~5月累計では約2.1倍」と大きく伸長している。
マルサンアイは昨年9月、「毎日おいしいローストアーモンドミルク」シリーズについて、アーモンドを増量し、配合を見直すなどのリニューアルを実施。完全切り替え後、「20年10月~21年5月までの前年同月比の平均伸長率は188%。その後も順調に推移している」という。
認知拡大図る
各社が市場の拡大を目指して取り組んだリニューアルに加え、「コロナ禍での巣ごもり需要に加え、健康に対しての意識が高まった」(江崎グリコ)ことで市場は急拡大した。さらに、「今までアーモンドミルクを購入していなかった消費者が購入している」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)こともあるという。
アーモンドミルク研究会によると、20年のアーモンドミルク市場は前年比19%増となり、100億円を突破した。
今後の市場拡大のための課題として、江崎グリコは「まだアーモンドミルクの認知は高くなく、中身に対しての理解も進んでいないことがトライアルを阻害する課題だ」と指摘した。
また、植物性ミルクであることから「持続可能な面でも有益なものなので、環境に対する意識の高まりに合わせた訴求も強化していく必要がある」としている。
一方、ポッカサッポロフード&ビバレッジは「飲用のきっかけづくりが大切」とし「例えば、店頭でトライアルをしたくなるような販促や、手軽にチャレンジできそうなアレンジレシピなども活性化に有効」と考えている。
マルサンアイは「嗜好性飲料の域を脱しきれていないのが現状。もう1歩先のステージに進むためには、さらなる認知の拡大が不可欠だ」という。
(Kyodo Weekly・政経週報 2021年8月2日号掲載)
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