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公立小の学食にも納豆巻き  豪州ですし根付く  土屋修久 前シドニー総領事館経済班

2021.05.02

公立小の学食にも納豆巻き  豪州ですし根付く  土屋修久 前シドニー総領事館経済班の写真

 オーストラリア・シドニーの日本食事情を、前シドニー総領事館経済班の土屋修久さんに、4月の離任直前に報告してもらった。(写真は同総領事館提供)

 シドニーに赴任して3年がたち、この間に様々な形で日本食の動向に触れ、普及促進に携わってきました。多くの日本人、オーストラリア人が日本食に高い関心をもち、日本食を新たに解釈し、自分たちに合った日本食を模索している場面に度々直面しました。今回は、シドニーの最近の日本食事情をお伝えできればと思います。

 私が20年前、ワーキングホリデーでシドニーを訪れた時は、市内には韓国系の回転すしとラーメン屋さんが数店舗しかなかったことを記憶しています。

 あらためて現在、市内の日本食レストランを見渡すと、日系レストランをはじめ、本場に負けない味を提供しています。すしロール店はシドニーの至るところに広がり、全豪で展開する大手小売店では店内ですしが調理販売されていて、シドニーに限らずダーウィンなどでもすしは食べられます。

 公立小学校の学食にも納豆巻きが提供されるほど、単なる人気・ブームではなく、完全に定着していると言えます。先日、非日系のすしロールチェーン店が発行するフリーペーパーに日本酒や生け花が特集されていることを発見し、日系の店舗でもほとんど見かけないこうした発信に驚愕し、日本文化の魅力や尊敬の深さにあらためて気が付きました。

おまかせコースも人気に


 すしロールが定着していく中で、ラーメンや焼肉、居酒屋、大判焼きなど新しい種類の日本食が広がりを見せています。そして、すしは原点回帰するような動きを見せており、200豪㌦(約1万6400円)を超える「おまかせコース」が人気となっています。

 コロナによりワーキングホリデービザなどの働き手が少ない中、カウンター越しに提供することで、労働力不足を補い、さらに日本への観光疑似体験の感覚もあり、コロナの状況を逆手にとって、新たなビジネスモデルを作り上げています。

 すしロール店の経営のほとんどが日系ではありません。シドニーでは、アジア人やオーストラリア人によるすしロール店が多く、日本人以外の人々によって支えられています。ラーメンや焼肉も同様の傾向にあり、現地の人々によって日本食が再解釈され、地域に根付こうとしています。

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 他方、日本人シェフによる日本食の普及も負けていません。オーストラリアならではの海の幸、野菜、フルーツなどを使いこなし、脂の乗った和牛をラーメンに浮かべた和牛ラーメンや、ハンバーグを米と海苔で挟んだすしバーガー、レモングラスを使っただし汁など、日本では食べることができないような日本食(?)を提供しています。

柔軟性を持つ日本食


 最近、日本食普及親善大使が行っているシェフの座談会にお邪魔し、日本食や日本人シェフの動向を教えてもらっています。皆さん日本人ならではの感覚と日本で修業した技術、そして日本食材や調味料に対する豊富な知識で、オーストラリア人に支持される日本食や和テイストを取り込んだ西洋料理を開発することに余念がありません。

 赴任当初は、フュージョン料理に関して懐疑的な視点を持っていましたが、最近では、日本食の発想や調味料は、西洋料理に活用され、その上品さを高めることに一役買っており、フュージョンが可能な日本食の懐の深さを認識しました。アジア料理の中でもこのような柔軟性を持つものは日本食くらいではないでしょうか。

 オーストラリア料理をこういうものと観念するのはまだまだ難しいですが、食の開拓は様々な要素を吸収しながらどんどん進んでいて、アジアと融合し、新しい文化が生まれる瞬間に立ち会えていることを光栄に思います。

 日本食も、カレーやカツなど諸外国の食べ物を取り込んで、もともとの日本食としてあったかのように発展してきました。オーストラリア料理も時間をかけて進化していく中で、日本食や日本食材がベースとなりヒントとなって発展し、カルフォルニアロールのように逆輸入され、混ざり合って向上することで、日豪がアジアでどこよりもおいしいものが食べられる国となることを期待しています。

(オセアニア農業専門誌ウェルス(Wealth) 4月23日号掲載)

【ウェルス(Wealth)】 NNAオーストラリアが発行する週刊のオセアニア農業専門誌です。

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